手水舎(てみずしゃ)とは何か―意味・歴史・構造・手水作法を解説

手水舎(てみずしゃ)とは、神前へ進む前に手や口を水で清める「手水」を行うための施設です。手水鉢・御手洗場・禊・潔斎との違い、二通りの読み方、建築と給排水の構造、史料から確認できる歴史、一般的な作法、花手水や柄杓を用いない設備、衛生管理への対応、現地案内を優先すべき理由まで、神社ごとの違いにも触れながら詳しく解説します。

基本情報

項目内容
用語手水舎
読み方てみずしゃ、ちょうずしゃ
別表記手水所・手洗舎など。個別施設では神社や文化財資料の正式名称を優先します
英語表記Temizuya / Chōzuya(説明訳:Purification Pavilion)
意味参拝者などが手水を行うため、水盤や給排水設備を備えた場所または建築施設
分類神社建築・参拝施設
対概念特になし
関連概念手水・手水鉢・御手洗・禊・潔斎・祓

第1章 手水舎とは

1-1 手水舎の基本的な意味

手水舎は、神社の参拝者などが、神前へ進む前に水で手や口を清める「手水」を行うための場所です。一般には、屋根と柱を備えた建物の内部または下部に手水鉢・水盤を据え、給水口、柄杓、排水設備などを設けます。ただし、すべての手水の場所が屋根付きの建物になっているわけではありません。露天の水盤、井戸、湧水、川辺の御手洗場などが用いられる例もあります。

したがって、「手水舎」という語は狭くは屋根を備えた建築を指しますが、神社の案内では手水を行う一画全体を指して用いられることもあります。個別の施設について述べる場合は、現地の額や案内板、神社の公式案内、文化財名称などを確認する必要があります。

1-2 手水・手水舎・手水鉢の違い

「手水」は清めの所作、「手水舎」はその所作を行う場所または建物、「手水鉢」は水をたたえる鉢・水盤を指します。柄杓は水を汲む道具であり、手水舎そのものではありません。建物がなく手水鉢だけが置かれている場合も、反対に流水式で柄杓を用いない場合もあります。

手水・手水舎・手水鉢の違い

用語指すもの要点
手水所作水で手や口を清めること
手水舎場所・建物手水を行うための施設
手水鉢設備手水に用いる水を受ける鉢・水盤
柄杓用具水を汲んで手へ注ぐための道具

1-3 すべての神社に手水舎があるわけではない

手水舎の有無や規模は、境内の広さ、水源、参拝者数、造営の経緯、維持管理などによって異なります。小規模な神社では手水鉢だけを置く場合があり、自然の水場を清めの場所とする神社もあります。断水、凍結、修理、衛生管理などのため、一時的に使用を停止することもあります。

1-4 手水舎の位置は一定ではない

手水舎は、一般に参拝者が拝殿へ進む途中の参道脇などに設けられます。しかし、鳥居の内外、神門との前後関係、参道の左右などに全国一律の配置規則があるわけではありません。境内の地形、旧来の水源、社殿の移転・再建、参拝動線の変更によって位置は異なります。

図1 参拝動線における手水舎の位置

第2章 「手水舎」の読み方と名称

2-1 「手水」は「てみず」か「ちょうず」か

「手水」には「てみず」と「ちょうず」の読みがあります。「てみず」は文字どおり手に用いる水、または手を水で清めることを表す読みです。「ちょうず」は音が変化した読みとして定着し、神社・寺院の施設名や日常語にも用いられてきました。現在も両方が使われているため、一方だけを誤読とすることはできません。

2-2 「てみずしゃ」と「ちょうずしゃ」

「手水舎」も「てみずしゃ」「ちょうずしゃ」の両方で読まれます。一般向けには「てみずしゃ」と案内する神社が多く見られますが、「ちょうずしゃ」を正式な読みとしている施設もあります。文化財名称や固有の建物名では、指定資料に記載された読みを優先します。

2-3 手水所・手洗舎・水屋

手水を行う場所は、手水所、手洗舎、水屋などと呼ばれることがあります。ただし、「水屋」は茶の湯に用いる準備空間など別の施設も指します。似た名称をすべて手水舎の同義語と断定せず、使用される場所と資料を確認することが大切です。

2-4 「御手洗」という名称

神社では、清めに用いる川・池・泉やその場所を「御手洗」と称する例があります。読みは「みたらし」などで、皇大神宮〈内宮〉の五十鈴川御手洗場のように、自然水域に接して手を清める場所もあります。現代の日常語の「お手洗い」と同じ漢字を用いる場合がありますが、神社の御手洗場は清めの水場を意味します。

第3章 史料にみる水による清めと手水

3-1 『古事記』の禊と水による清め

『古事記』上巻には、黄泉国から戻った伊邪那岐命が「筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原」で禊祓を行ったとする神話が記されています。この神話は、神道における水と清めを考える重要な伝承です。ただし、ここに現在のような手水舎が記されているわけではありません。禊の神話を、そのまま手水舎という建築の創始記事として扱うことはできません。

3-2 『日本書紀』にみる禊の伝承

『日本書紀』神代巻にも、伊弉諾尊が水に入って身を清める伝承が本文や一書に記されています。『古事記』と表現や展開が同一ではないため、原文を引用する場合は本文・一書の別を示す必要があります。これらは水による清めの観念を示しますが、参拝者向け手水舎の成立年代を直接証明する史料ではありません。

3-3 『延喜式』にみる祭祀前の潔斎と水

『延喜式』には、大祓、斎戒、祭祀に用いる水や祭員の清浄に関わる規定が収められています。これらから、祭祀に臨む際に清浄を重んじた制度や所作を検討できます。一方、宮廷祭祀の規定と、現在の神社で一般参拝者が行う手水の作法は、時代・場所・担い手が異なります。両者の関係を説明する際には、連続性を想定するだけでなく、相違点も示さなければなりません。

3-4 清めの観念・手水の所作・手水舎の建築

水による清めの観念、手や口を清める所作、手水鉢と覆屋を備えた建築は、互いに関係しますが同じものではありません。古代神話に禊が記されていることだけから、現在の手水作法や手水舎の形が古代に完成していたとはいえません。建築としての歴史は、古典だけでなく、境内図、社寺絵図、棟札、寄進銘、修理報告書、発掘成果などを組み合わせて確認します。

第4章 手水舎の成立と歴史をどう考えるか

4-1 禊と手水の関係

禊は海・川・滝などで身体を水にさらして行うことがあり、手水は主として手や口を水で清める所作です。手水を「禊を簡略にしたもの」と説明する場合がありますが、これは両者の意味上の関係を分かりやすく示す説明です。いつ、どこで、一つの制度として簡略化されたかを示す単一の史料があるという意味ではありません。

4-2 自然水域・井戸・湧水を利用する清め

神社には川、池、泉、井戸などを清めの水に用いる例があります。これらの水場は、立地や祭祀の由緒と結び付く場合があります。ただし、自然水域の利用を古代神社全般の共通形態とみなすことはできません。個別の神社ごとに、地形、考古資料、社伝、地誌、絵図、現行祭祀を照合する必要があります。

4-3 水鉢と覆屋の設置

手水鉢には、奉納者、年紀、石工名などが刻まれている場合があります。覆屋である手水舎には、棟札、修理銘、建築部材の痕跡が残ることもあります。これらは個別施設の造営・改修年代を検討する手掛かりになりますが、鉢の年代と覆屋の年代が一致するとは限りません。

4-4 中世・近世の手水施設

中世・近世の社寺絵図や建築遺構には、水屋、手水所、手水鉢などを確認できる場合があります。江戸時代の紀年銘を持つ手水鉢も各地に残ります。しかし、現存例が多い時代と、手水という行為が始まった時代は同じではありません。「中世に手水舎が成立した」「江戸時代に現在の形が完成した」と全国一律に区切らず、確認できる事例ごとに記述するのが適切です。

4-5 近代以降の境内整備

近代以降、境内の参道整備、給水設備の導入、参拝者の動線整理などに伴い、手水舎が新築・移築・改修された例があります。水道の普及によって安定した給水が可能になった一方、旧来の井戸や湧水が使われなくなった場合もあります。現在の手水舎を観察する際は、創建伝承だけでなく、直近の造営・修理履歴も確認する必要があります。

第5章 手水舎が担う役割

5-1 神前へ進む前の清め

手水舎の中心的な役割は、参拝に先立って手や口を水で清める機会を設けることです。日常の状態から神前での拝礼へ移る途中で立ち止まり、身なりと動作を整える場所でもあります。

5-2 身体の清潔と祭祀上の清め

手水には手を洗うという衛生的な側面がありますが、石けんを用いて汚れを落とす日常の手洗いと完全に同じではありません。神前へ向かう前の清めという意味を伴う所作です。ただし、衛生管理を軽視してよいという意味ではなく、水の利用可否や口すすぎについては現地表示に従います。

5-3 参拝の動作を整える場所

鳥居をくぐり、参道を進み、手水を行ってから拝礼へ向かうという動線は、参拝者の気持ちと動作を段階的に整えます。ただし、手水舎が鳥居の直後にある神社も、神門の近くにある神社もあり、参拝動線は一様ではありません。

5-4 祭典における手水

祭典では、神職や祭員が所定の場所で手水を行うことがあります。一般参拝者が境内の手水舎で行う作法と、祭典の次第に組み込まれた手水は、利用者、用具、場所、所作が異なる場合があります。個別祭典の手順は、その祭典の式次第や神社の説明で確認します。

5-5 境内景観を構成する施設

手水舎は実用施設であると同時に、屋根、木組み、石造水盤、彫刻、吐水口などによって境内景観を形づくります。社殿と意匠を合わせた例もあれば、寄進された石造物を中心に簡素な覆屋を設けた例もあります。規模の大小だけで価値を判断せず、水源、銘文、造営年代、参拝動線との関係を読み取ることが大切です。

第6章 手水舎の構造と設備

6-1 手水舎の基本構成

屋根付きの手水舎は、柱、梁、桁、垂木、屋根などの建築部分と、手水鉢・水盤、給水口、柄杓置き、排水口、足元の舗装などの設備部分から成ります。四方を開放した形式が多く見られますが、風雨や積雪への対応、境内の意匠によって囲いを設ける場合もあります。

6-2 屋根と柱の形式

屋根には切妻造、入母屋造、方形に近い形式などがあり、銅板葺、瓦葺、檜皮葺などの材料が用いられます。これらは手水舎だけに固有の形式ではありません。名称を判断するときは外観だけで決めず、文化財資料や修理報告書に記載された建築形式を確認します。

6-3 手水鉢・水盤の材質

手水鉢には石造、金属製、木製などがあります。長方形の大きな水盤だけでなく、自然石を加工したもの、古い石造物を転用したと伝えるものなど形態は多様です。転用や由来については、伝承と物的証拠を分けて記述します。

6-4 吐水口の意匠

吐水口には竹筒、金属管、龍や亀などを表した彫刻が用いられることがあります。龍口はよく知られた意匠ですが、すべての手水舎に備わるわけではありません。また、龍の意味について全国共通の説明を当てはめず、奉納記録や神社の案内がある場合に個別に確認します。

6-5 給水と排水

水源には湧水、井戸水、水道水などがあり、循環設備を用いる場合もあります。見た目が清らかでも飲用に適するとは限りません。排水は水盤の底や縁から溝・管へ導かれ、足元へ水がたまらないよう計画されます。古い水盤に新しい給排水設備を組み合わせる例もあります。

6-6 手水舎・露天水盤・自然水域

清めの場所は、屋根付きの手水舎、覆屋のない水盤、川辺の御手洗場などに分けて観察できます。建物の有無だけで優劣を付けるものではなく、それぞれが水源、地形、祭祀、維持管理に対応した形態です。

図2 手水舎を構成する建物と設備

第7章 手水舎と関連施設の違い

7-1 手水舎・手水鉢・御手洗場・禊場の比較

手水舎と関連する清めの場所・所作の違い

名称指すもの水の形態注意点
手水舎手水を行う場所・建物水盤、流水など屋根がない例もあります
手水鉢水を受ける設備鉢・水盤建物そのものではありません
御手洗場清めを行う水辺川、池、泉など固有名称・読みを確認します
禊場禊を行う場所海、川、滝、人工水場など一般参拝者向けとは限りません
潔斎祭祀前などに身を慎み清めること水だけに限定されません場所や建物の名称ではありません

7-2 手水舎と御手洗場の違い

手水舎は水盤や給排水設備を備えた施設を指すのが基本です。御手洗場は川岸、池畔、泉など自然の水に接する場所を指すことがあります。ただし、名称の使い方は神社によって異なるため、外観だけで分類するのではなく正式名称を確認します。

7-3 手水と禊の違い

手水は主として手と口を水で清める所作です。禊は身体を水に浸す、滝水を受けるなど、より広い身体的な清めを指すことがあります。両者は清めという点で関係しますが、規模だけで機械的に区別できるとは限りません。

7-4 手水と潔斎の違い

潔斎は、祭祀などに先立ち、一定期間または所定の方法で身を清め慎むことを指します。食事、行動、滞在場所などに関する慎みを含む場合があり、手水だけを意味しません。手水は潔斎の過程に含まれる場合がありますが、両者は同義ではありません。

7-5 寺院や茶庭の手水鉢

手や口を清める水鉢は寺院にも見られ、茶庭では蹲踞などが用いられます。形態や所作には共通点がありますが、それぞれの宗教的・文化的な文脈を無視して、どれか一つをすべての直接的起源と断定することは避けます。

第8章 手水と清めの場所を伝える神社の事例

8-1 皇大神宮〈内宮〉―五十鈴川御手洗場と手水舎

皇大神宮〈内宮〉では、宇治橋を渡って参道を進むと手水舎があり、さらに五十鈴川の川岸に御手洗場があります。屋根付きの施設と自然水域に接する場所の双方を確認できるため、手水舎と御手洗場を比較するうえで重要な事例です。天候や河川の状況、現地の案内に従って利用します。

皇大神宮〈内宮〉の境内と御手洗場を紹介しています。

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五十鈴川御手洗場を伝える皇大神宮〈内宮〉
皇大神宮〈内宮〉(伊勢市宇治館町)〈伊勢神宮〉

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8-2 瀧原宮・瀧原竝宮―参道から御手洗場へ

瀧原宮・瀧原竝宮では、参道から谷へ下り、川辺の御手洗場へ至る空間を確認できます。石造水盤を中心とする手水舎とは異なり、地形と流水を参拝前の清めに結び付ける例として見ることができます。

瀧原宮・瀧原竝宮の参道と御手洗場を紹介しています。

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参道と御手洗場を伝える瀧原宮・瀧原竝宮
瀧原宮・瀧原竝宮〈皇大神宮(内宮)別宮〉

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8-3 滝祭神―五十鈴川の水と祭祀空間

滝祭神は五十鈴川のほとりに鎮座する皇大神宮の所管社です。一般的な手水舎の建築例ではありませんが、神宮の境内において川の水と祭祀空間がどのように結び付いているかを考える手掛かりになります。手水舎・御手洗場・水に関わる祭祀を同一のものとして扱わず、それぞれの性格を見分けるための事例です。

五十鈴川のほとりに鎮座する滝祭神を紹介しています。

URL:https://shrineheritager.com/takimatsuri-no-kami/

五十鈴川の水と祭祀空間を伝える滝祭神
滝祭神〈皇大神宮(内宮)所管社〉(内宮境内)

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8-4 三例から分かること

三例は、清めの場所が一つの建築形式だけで構成されていないことを示します。水盤と覆屋を備えた手水舎、川岸へ下りる御手洗場、水辺に鎮座する神社は、それぞれ役割が異なります。水があるという共通点だけで同一視せず、名称、利用者、所作、祭祀上の位置を確認することが重要です。

第9章 手水の作法と現代の運用

9-1 一般的に案内される手水の手順

柄杓を用いる手水舎では、一般に、右手で柄杓を持って左手を清め、左手へ持ち替えて右手を清めます。再び右手で柄杓を持ち、左手に水を受けて口をすすぎ、最後に左手を清めます。柄杓へ直接口をつけません。残った水で柄杓の柄を流すよう案内されることもありますが、水量や設備によって無理に行う必要はありません。

図3 一般的な手水の手順

9-2 口をすすぐ場合の注意

口をすすぐときは、柄杓の水を左手に受け、その水を口へ運びます。柄杓に口をつけず、水盤へ向けて水を吐き出さないようにします。口すすぎを控える表示がある場合、飲用不可の場合、体調上難しい場合は、手を清めるだけにします。

9-3 手水が利用できない場合

手水舎が閉鎖されている、断水している、凍結防止のため水が止められているなどの場合でも、直ちに参拝できないということではありません。現地の案内に従い、静かに神前へ進みます。利用停止中の設備を無理に動かしたり、持参した水を水盤へ入れたりしません。

9-4 柄杓を置かない手水舎

近年は、吐水口から流れる水へ直接手を差し出す形式、一定時間だけ水が出る形式、自動水栓なども見られます。柄杓がない場合は、両手を順に清め、必要に応じて手に受けた水で口をすすぎます。設備に掲示された方法を優先します。

9-5 花手水

花手水は、手水鉢や水盤に花を浮かべて彩る現代の取り組みとして広く知られています。花が浮かべられた水盤が手水に使用できるとは限りません。別に流水設備が設けられている場合もあるため、装飾用の水盤へ手を入れず、案内を確認します。

9-6 現地案内を優先する

手水の方法は、柄杓の有無、水の流れ方、足元、排水、水質などによって変わります。「必ず一杯の水だけで全手順を行う」「最後に必ず柄を洗う」などと一律に求めず、神社の掲示、神職の案内、設備の状態を優先するのが適切です。

第10章 よくある質問(FAQ)

Q1 手水舎は「てみずしゃ」と「ちょうずしゃ」のどちらが正しいですか

両方の読みが用いられています。一般説明では「てみずしゃ」が広く使われますが、個別施設では神社の公式案内や文化財資料に記載された読みを優先します。

Q2 手水舎と手水鉢は何が違いますか

手水舎は手水を行う場所・建物、手水鉢は水を受ける鉢・水盤です。手水鉢は手水舎を構成する設備の一つですが、屋外に単独で置かれることもあります。

Q3 手水をしないと参拝できませんか

手水は参拝前の大切な作法ですが、施設の閉鎖、断水、凍結、体調などで行えない場合があります。その場合は現地の案内に従い、無理をせず参拝します。

Q4 口は必ずすすぐ必要がありますか

口すすぎを控える表示がある場合や、衛生・体調上難しい場合は行いません。柄杓へ直接口をつけることも避けます。

Q5 手水舎の水は飲めますか

飲用可能と明示されていない水は飲まないでください。湧水や井戸水に見えても、手水用であって飲用水ではない場合があります。

Q6 柄杓がない場合はどうすればよいですか

流水へ両手を順に差し出すなど、設備に合った方法で清めます。掲示がある場合はその方法に従います。

Q7 花手水の水で手を清めてもよいですか

花手水は観賞用として設けられている場合があります。花の入った水盤へ手を入れず、別の流水口や案内を確認します。

Q8 手水舎はいつ頃成立したのですか

全国の手水舎に共通する一つの成立年代を示すことは困難です。水による清めの伝承は古代史料に見えますが、現在のような建築は、個別の棟札、寄進銘、境内図、文化財資料、修理記録などから確認する必要があります。

第11章 Shrine Heritager編集部考察

11-1 手水舎は「禊の縮小版」とだけ説明できるか

手水を禊の簡略な形と説明すると、清めという共通点は理解しやすくなります。しかし、それだけでは、一般参拝者の所作、祭典における手水、手水鉢の寄進、覆屋の建築、近代的な給排水設備といった異なる要素を説明できません。手水舎は、清めの観念がそのまま建築になったのではなく、所作・水源・造営・参拝動線が重なって形成された施設として見る必要があります。

11-2 建物だけでなく水との向き合い方を見る

手水舎を観察するときは、屋根の華麗さだけでなく、水がどこから来て、どのように水盤へ入り、どこへ排水されるかにも目を向けたいところです。川辺の御手洗場では、地形そのものが参拝動線をつくります。水盤、井戸、湧水、川という違いを確かめることで、その神社が水と清めをどのように境内へ位置付けているかが見えてきます。

第12章 関連項目(See also)・内部リンク

手水舎に関連する用語・神社記事

関連項目URL関係
鳥居https://shrineheritager.com/torii/参拝動線の入口を示す施設
神門https://shrineheritager.com/shinmon/手水舎と前後して配置されることがある門
拝殿https://shrineheritager.com/haiden/手水の後に拝礼を行う中心的施設
皇大神宮〈内宮〉https://shrineheritager.com/kotai-jingu/手水舎と五十鈴川御手洗場を確認できる事例
瀧原宮・瀧原竝宮https://shrineheritager.com/takihara-no-miya/川辺の御手洗場を伝える事例
滝祭神https://shrineheritager.com/takimatsuri-no-kami/五十鈴川の水と祭祀空間を考える事例

第13章 参考文献

13-1 一次史料・古典籍

『古事記』
倉野憲司校注『古事記』岩波文庫、岩波書店、1963年。上巻、伊邪那岐命の禊祓に関する条。

『日本書紀』
坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋校注『日本書紀(一)』日本古典文学大系、岩波書店、1967年。巻第一、神代上。

『延喜式』
虎尾俊哉編『延喜式』訳注日本史料、集英社。神祇関係諸巻の大祓・斎戒・祭祀用水に関する規定。

13-2 神道・祭祀に関する基礎文献

國學院大學日本文化研究所編『神道事典』
弘文堂、1994年。「手水」「禊」「潔斎」などの項目。

神社本庁教学研究所監修『神道いろは』
神社新報社。参拝、手水、祓に関する解説。

13-3 建築・文化財資料

文化庁編『国宝・重要文化財建造物目録』および各建造物修理工事報告書
個別の手水舎・水屋の名称、構造、造営年代、修理履歴を確認するために参照します。

13-4 神社・公的機関の資料

神宮司庁公式ウェブサイト、神社本庁公式ウェブサイト、文化遺産オンライン、各神社の公式案内・境内図を参照します。個別施設の名称・利用方法は最新の現地案内を優先します。

第14章 External Links(外部リンク)

神社本庁

神社参拝と手水を含む基本的な作法を確認するための公式サイトです。

URL: https://www.jinjahoncho.or.jp/

伊勢神宮

皇大神宮〈内宮〉、五十鈴川、参拝案内などを確認するための神宮公式サイトです。

URL: https://www.isejingu.or.jp/

文化遺産オンライン

文化庁が運営し、指定・登録文化財となっている手水舎や関連建造物を検索できる公的データベースです。

URL: https://bunka.nii.ac.jp/

第15章 更新履歴(Revision History)

更新履歴

更新日状態更新内容
2026年9月11日Edition 1Official Master定義、史料、歴史、構造、比較、事例、作法を全面的に再構成しました。

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