葉生田神社（松阪市法田町）〈『延喜式』牛庭神社・神垣神社〉

葉生田神社（はふだじんじゃ）は　平安時代末期から土田（はふだ）村の神仏混淆の産土神「日天八王子社」でした　明治３年 神仏分離により「葉生田神社」と改称　明治４０年の県令により　漕代（こいしろ）村の２２社２６祭神を合社・合祀　昭和２８年に分社・分祀するも　正式な手続きは社名変更のみで　現在も２２社２６祭神が祀られています

1.ご紹介（Introduction）

　この神社の正式名称や呼ばれ方　現在の住所と地図　祀られている神様や神社の歴史について　ご紹介します

【神社名(Shrine name）】

葉生田神社（Hafuda shrine）

【通称名(Common name)】

・ほうだじんじゃ

【鎮座地　(Location)　】

三重県松阪市 法田（ほうだ）町 375

【地　図 (Google Map)】

【御祭神　(God's name to pray)】

《主祭神》２２社２６祭神〈漕代（こいしろ）村の　全７カ字の２２社２６祭神を合社・合祀〉

　葉生田神社（法田字北裏）《主》国狭槌命、天之御中主命
　與古知神社（横地字的場）《主》田心姫命、湯津姫命、市杵島姫命
　宇気比神社（目田字門）《主》天忍穂耳命
　熊野神社（目田字平田）《主》櫛御気野命
　宇気比神社（早馬字瀬下通）《主》猿田彦命
　早馬瀬神社（早馬字）《主》
　須賀神社（早馬字）《主》速須佐之男神
　八幡神社（早馬字）《主》譽田別命
　神明社（早馬字蓬原瀬）《主》大日女命、豊宇気毘売命
　式内神垣神社（高木字大山）《主》神魂命
　高木神社（高木字）《主》天長白羽命
　荒玉神社（高木字）《主》猿田彦神
　八幡神社（高木字）《主》譽田別命
　神御田神社（高木字）《主》宇受女命
　葺出神社（高木字）《主》屋船命
　稲木神社（稻木字風呂垣内）《主》天忍穂耳命
　風神社（稻木字城垣内）《主》級長津彦命、級長戸邊命
　石井神社（稻木字田垣外）《主》天忍穂耳命
　八幡神社（稻木字北垣内）《主》譽田別命
　若宮神社（稻木字）《主》譽田別命
　伊勢庭神社（伊勢場字中道）《主》天忍穂耳命,田心姫命、湯津姫命、市杵島姫命
　八幡神社（伊勢場字中道）《主》譽田別命〈伊勢庭神社の境内社〉
　雨水神社（伊勢場字中道）《主》水波能女神、水分神〈伊勢庭神社の境内社〉

葉生田神社の祭神

　漕代地区の本社の祭神

葉生田神社

　天之御中主尊（アメノミナカヌシノミコト）
　国狭槌尊（クニノサヅチノミコト）

　法田町の産土社の祭神

葉生田神社

　天之忍穂耳命（アメノオシホミミノミコト）
　天之菩卑能命（アメノホヒノミコト）
　天津日子根命（アマツヒコネノミコト）
　活津日子根命（イクツヒコネノミコト）
　熊野久須毘命（クマノクスビノミコト）
　多紀理毘売命（タキツヒメノミコト）
　市寸島比売命（イチキシマヒメノミコト）
　多岐都比売命（タキツヒメノミコト）

葉生田神社の歴史

一　日天八王子社

　天文　九年（1540年）神社創建
　元亀　二年（1571年）神仏混淆　別当寺（長楽寺）創建
　寛政　八年（1796年）式年遷宮
　文化十三年（1816年）式年遷宮
　天保　七年（1836年）式年遷宮
　安政　三年（1856年）式年遷宮

二　葉生田神社

　明治　三年（1870年）廃仏毀釈　（葉生田神社）と社名変更
　明治　九年（1876年）式年遷宮
　明治二九年（1896年）式年遷宮

三　漕代神社

　明治四一年（1908年）漕代村七字の神社を合祀し（漕代神社）を新築
　昭和　三年（1928年）式年遷宮

四　葉生田神社

　昭和二八年（1953年）元の七字に分社し（葉生田神社）と社名復元
　昭和二九年（1954年）遷宮
　昭和四九年（1974年）式年遷宮
　平成　六年（1994年）式年遷宮
　平成二六年（2014年）式年遷宮

現地案内板より

【御神徳　(God's great power)】（ご利益）

【格　式　(Rules of dignity) 】

・『延喜式神名帳（engishiki jimmeicho ）927 AD.』所載社を合祀

【創　建　(Beginning of history)】

『飯南郡史』に記される内容

【抜粋意訳】

・寺社編　第二項神祠

卅六　村社　漕代神社

法田字北裏にあり、国狭槌命、天之御中主命を祭る、元は葉生神社と稱す、明治四十年十二月左の数社を合祀の上 漕代神社と單稱するの許可を受け同四十一年一月二十五日合祀祭を執行せり

宇氣比神社跡

早馬字瀬下通にあり、猿田彦命を祭る、前項漕代神社へ合祀されたり

神明神社

同字蓬原瀬にあり、両大神御魂を祭る、如前

風神社跡

稻木字城垣内にあり、級長津彦命、級長戸邊命を祭る、前に同じ

石井神社跡

同字田垣外にあり、天忍穂耳命を祭る、同前

稲木神社跡

同字風呂垣内にあり、祭神其他同前

八幡神社跡

同字北垣内にあり、譽田別命を祀る、同前

神垣神社跡

高木字大山にあり、神魂命を祭る、延喜式内神社なるも由緒詳ならず、境内に五祀あり、前の如く合祀さる

奥古知神社跡

横地字的場にあり、田心姫命、湯津姫命、市杵島姫命を祭る、同前合祀

宇氣比神社跡

目田字門にあり、天忍穂耳命を祭る、同前

熊野神社跡

同字平田にあり、早玉男命を祭る、同前

伊勢庭神社跡

伊勢場字中道にあり、天忍穂耳命,田心姫命、湯津姫命、市杵島姫命を祭る、境内に二社あり、共に項に前同じく合祀さる

【原文参照】

【由　緒　(History)】

由緒

　当社は、平安時代末期から伊勢の国飯野郡土田（はふだ）村の「日天八王子社」という神仏混淆の産土神であった。

　明治３年、神仏分離により「葉生田神社」と改称した。明治４０年の県令により、飯南郡漕代（こいしろ）村の全７カ字の２２社２６祭神をこの「葉生田神社」に合社・合祀し、社名を「漕代神社」と改称した。
　昭和２３年の現憲法発布、昭和２６年の宗教法人法制定に伴い、同２８年に元の７カ字に分社・分祀し漕代村大字法田（現松阪市法田町）の「漕代神社」は元の「葉生田神社」となった。
このとき宗教法人法による正式な手続きは社名変更だけにとどめたため、現在も「葉生田神社」には７カ町（旧７カ字）の２２社２６祭神が祀られている。

皇學館大学現代日本社会学部神社検索システム研究会・三重県神社庁HPより
https://jinja-net.jp/jinjacho-mie/jsearch3mie.php?jinjya=63716

【神社の境内　(Precincts of the shrine)】

・本殿

・拝殿

・社頭　鳥居

・鎮守の杜　全景

【神社の境外　(Outside the shrine grounds)】

「昭和２３年の現憲法発布、昭和２６年の宗教法人法制定に伴い、同２８年に元の７カ字に分社・分祀し漕代村大字法田（現松阪市法田町）の「漕代神社」は元の「葉生田神社」となった」

7字に分社・分祀されたのは　以下の7社

①〈字（法田字）〉は　葉生田神社（松阪市法田町）

②〈字（横地字）〉

・與古知神社（松阪市横地町）の記事を参照

 

③〈字（目田字）〉

・熊野神社 宇氣比神社（松阪市目田町）の記事を参照

 

④〈字（早馬字）〉

・早馬瀬神社（松阪市早馬瀬町）の記事を参照

宇気比神社（早馬字瀬下通）・須賀神社（早馬字）・八幡神社（早馬字）・神明社（早馬字蓬原瀬）を合祀か?

 

⑤〈字（高木字）〉

・神垣神社（松阪市高木町）の記事を参照

神垣神社（松阪市高木町）は　現在　葉生田神社（松阪市法田町）の飛地の境外社です

 

⑥〈字（稻木字）〉

・稲木神社（松阪市稲木町）の記事を参照

風神社（稻木字城垣内）・石井神社（稻木字田垣外）・八幡神社（稻木字北垣内）・若宮神社（稻木字）を合祀

 

⑦〈字（伊勢場字）〉

・伊勢庭神社（松阪市伊勢場町）の記事を参照

〈伊勢庭神社の境内社〉八幡神社・雨水神社を合祀

この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)

この神社は　大和朝廷による編纂書〈六国史・延喜式など〉に記載があり　由緒（格式ある歴史）を持っています

〇『六国史（りっこくし）』
　　奈良・平安時代に編纂された官撰（かんせん）の6種の国史〈『日本書紀』『續日本紀』『日本後紀』『續日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代實録』〉の総称

〇『延喜式（えんぎしき）』
　　平安時代中期に編纂された格式（律令の施行細則）

〇『風土記（ふどき）』
　『続日本紀』和銅6年（713）5月甲子の条が　風土記編纂の官命であると見られ　記すべき内容として下記の五つが挙げられています

1.国郡郷の名（好字を用いて）
2.産物
3.土地の肥沃の状態
4.地名の起源
5.古老の伝え〈伝えられている旧聞異事〉

現存するものは全て写本

『出雲国風土記』がほぼ完本
『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載〈This record was completed in December 927 AD.〉

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』といい　当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社（式内社）の一覧となっています

・「官社（式内社）」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」

葉生田神社（松阪市法田町）は　式内社の論社を二つ合祀しています

明治４０年の県令により　飯南郡漕代（こいしろ）村の全７カ字の２２社２６祭神を合社・合祀しました

この中に式内社の論社を二つ合祀しています

昭和２６年の宗教法人法制定に伴い　同２８年に元の７カ字に分社・分祀したが　宗教法人法による正式な手続きは社名変更だけにとどめたため　現在も「葉生田神社」には７カ町（旧７カ字）の２２社２６祭神が祀られています

①合祀　伊勢庭神社跡（伊勢場字中道）

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）東海道　731座…大52（うち預月次新嘗19）・小679

[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）伊勢國　253座（大18座・小235座）

[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）多氣郡　52座（並小）

[旧　神社　名称 ] 牛庭神社
[ふ　り　が　な ]（うしにはの かみのやしろ）
[Old Shrine name]（Ushiniha no kaminoyashiro）

②合祀　神垣神社跡（高木字大山）

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）東海道　731座…大52（うち預月次新嘗19）・小679

[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）伊勢國　253座（大18座・小235座）

[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）飯野郡　4座（並小）

[旧　神社　名称 ] 神垣神社
[ふ　り　が　な ]（かむかきの かみのやしろ）
[Old Shrine name]（Kamukaki no kaminoyashiro）

【原文参照】

【オタッキーポイント】（This is the point that Otaku conveys.）

あなたが　この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します

延喜式内社　伊勢國 多氣郡 牛庭神社（うしにはの かみのやしろ）の論社

・牛庭神社（松阪市下蛸路町）

・牛庭神社 跡（松阪市東久保町）
〈二十五柱神社に合祀された牛庭神社 跡〉

・〈二十五柱神社に合祀された牛庭神社〉二十五柱神社（松阪市柿木原町）

・伊勢庭神社（松阪市伊勢場町）

・葉生田神社（松阪市法田町）
伊勢庭神社（松阪市伊勢場町）は　明治40年（1907）漕代神社（現 葉生田神社）に合祀され　昭和27年（1952）現在地〈旧社地〉に分祀されました
現在は　葉生田神社（松阪市法田町）の飛地の境外社です

 

延喜式内社　伊勢國 飯野郡 神垣神社（かむかきの かみのやしろ）の論社について

・神垣神社（松阪市高木町）

神垣神社（松阪市高木町）は　現在　葉生田神社（松阪市法田町）の飛地の境外社です

 

・葉生田神社（松阪市法田町）
〈『特選神名牒』に　法田村 葉生田神社に合併とあり〉

神垣神社（松阪市高木町）は　明治40年（1907）漕代神社（現 葉生田神社）に合祀され　昭和27年（1952）現在地〈旧社地〉に分祀されました
現在は　葉生田神社（松阪市法田町）の飛地の境外社です

 

【神社にお詣り】(Here's a look at the shrine visit from now on)

この神社にご参拝した時の様子をご紹介します

JR紀勢本線　多気駅から北方へ約1.6km　弟国（おうぐに）の交差点を左折〈北上〉して　祓川を渡り法田町の集落の北側にあります　車での所要時間は4～5分程度

田の中に鎮守の杜が見えてきました

神社の東側に大きなグラウンドがあります

葉生田神社（松阪市法田町）に参着

社頭は南方向を向いています

一礼をして鳥居をくぐり境内へと進みます

境内に社号標がありました
゛葉生田神社゛と刻字されています

社殿は石垣の上　一段高い社地に建てられています

石段を上がり　鳥居をくくって
拝殿にすすみます

賽銭をおさめ　お祈りをします
ご神威に添い給うよう願いながら礼　鎮まる御祭神に届かんと　かん高い柏手を打ち　両手を合わせ祈ります

社殿に一礼をして　境内を戻ります

【神社の伝承】(I will explain the lore of this shrine.)

この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します

『神社覈録（Jinja Kakuroku）〈明治3年（1870年）〉』に記される伝承

式内社　牛庭神社について　所在は゛蛸路村に在す、゛〈現　牛庭神社（松阪市下蛸路町）〉と記しています

【抜粋意訳】

牛庭神社

牛庭は　宇志尓波と訓べし

〇祭神詳ならず

〇蛸路村に在す、〔考証、俚諺〕今 飯野郡に属す

【原文参照】

式内社　神垣神社について　所在は゛高木村に在す、゛〈現　神垣神社（松阪市高木町）〉と記しています

【抜粋意訳】

神垣神社

神垣は加美賀岐と訓べし

〇祭神　葉山祇命、〔俚諺〕

〇高木村に在す、〔俚諺〕

【原文参照】

『神祇志料（Jingishiryo）』〈明治9年（1876）出版〉に記される内容

式内社　牛庭神社について　所在は゛今 伊勢場村産神゛〈現　伊勢庭神社（松阪市伊勢場町）〉と記しています

【抜粋意訳】

牛庭（ウシハノ）神社

今 伊勢場村産神 盖是也、
〔〇按 神宮雑例集、神鳳鈔、牛庭御園あり、藤波氏古文書、牛庭御厨あり、神領目録に伊勢場御園あり、所謂 牛庭訛て伊勢塲となりし事著し、附て考に備ふ、〕

式内社　神垣神社について　社号のみが記されています

【抜粋意訳】

神垣（カミカキノ）神社

【原文参照】

『特選神名牒（Tokusen Shimmyo cho）〈明治9年（1876）完成〉』に記される伝承

式内社　牛庭神社について　所在は　諸説あって一定しない　と記しています

諸説の所在は
゛今 飯野郡に伊勢場村あり其村の東北 畠中に産神社あり是に配すへし゛〈現　伊勢庭神社（松阪市伊勢場町）〉
゛神鳳抄に云ふ所とは　東西大に懸隔せりと云ひ゛
゛神名帳考諦等には　飯野郡蜻路村牛嶺にあり゛〈現　牛庭神社（松阪市下蛸路町）〉
゛明細帳には　本郡の牛草村なりと云゛〈現　牛庭神社 跡（松阪市東久保町）〈二十五柱神社に合祀された牛庭神社 跡〉〉

【抜粋意訳】

牛庭神社

祭神
祭日
社格

所在　（合併）

　今按　檢錄に雜例集神鳳抄に飯野郡牛庭御菌あり 當社所在の地名なり　然るに神領目錄には伊勢庭御蘭に作る　今 飯野郡に伊勢場村あり其村の東北 畠中に産神社あり是に配すへし
又 下宇爾村新茶屋の北に牛庭長者舊址と唱ふる地あり
併 神鳳抄に云ふ所とは　東西大に懸隔せりと云ひ
神名帳考諦等には　飯野郡蜻路村牛嶺にありとし
明細帳には　本郡の牛草村なりと云て一定せず

【原文参照】

式内社　神垣神社について　所在は三説を挙げています

゛法田村゛〈現　葉生田神社（松阪市法田町）に合祀〉
゛苦木村゛
゛高木村゛〈現　神垣神社（松阪市高木町）〉

【抜粋意訳】

神垣神社

祭神
祭日
社格

所在　（同村 葉生田神社に合併）（覈録 髙木村とし　明細帳も高木村　神垣神社を以 式社とせり村社なり）

　今按に　檢錄に法田村 苦木村 高木村の三處に配する説あれど　何れも明證なし　法田は紺掻を業とするもの多きを以てし　苦木は垣の音あろを以てし　高木は字音の通ふを以てせるなりと云り　姑附て考に備ふ

【原文参照】

葉生田神社（松阪市法田町）「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

伊勢国　式内社　253座（大18座・小235座）についてに戻る