神明神社(しんめいじんじゃ)は かつて火災に遭って多くの記録を失い 創建年代等は不祥 延喜式内社 伊豆國 那賀郡 仲大歳神社(なかおほとしの かみのやしろ)の論社です 毎年十一月の秋祭りに奉納される三番叟は初演が享保年間即ち1700年代と伝えられ 三世紀に渡り伝承される貴重な民俗文化財です

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目次
1.ご紹介(Introduction)
この神社の正式名称や呼ばれ方 現在の住所と地図 祀られている神様や神社の歴史について ご紹介します
【神社名(Shrine name)】
神明神社(Shinmei shrine)
【通称名(Common name)】
・海名野神明社(かいなのしんめいしゃ)
【鎮座地 (Location) 】
静岡県賀茂郡西伊豆町中574〈旧住所 賀茂郡西伊豆町仁科海名野574〉
【地 図 (Google Map)】
【御祭神 (God's name to pray)】
《主》天照皇大神(あまてらすすめおほみかみ)
※明治六年十月 合祀社
(栗原天神社・寺川駒形神社・岩谷戸八幡社・堀坂熊野社・一色山神社・祢宜畑子神社・白川三王社・大城八幡社・宮ケ原天神社)
【御神徳 (God's great power)】(ご利益)
【格 式 (Rules of dignity) 】
・『延喜式神名帳(engishiki jimmeicho )927 AD.』所載社
【創 建 (Beginning of history)】
西伊豆町誌 資料 第一集より 神社・寺院並びに棟札編
神明神社
西伊豆町中五四七番地(海名野)
祭神 天照皇大神
環境
国道一三六号の仁科浜橋付近を基点とする主要地方道 西伊豆〜伊東線を仁科川の右岸を遡ること約一・五キロメートル中村の集落がある。ここは江戸時代の中村の名が残っているところである。海名野橋のバス停付近から橋を渡り石畳の坂道を登り海名野の家並みを通り抜け山道にかかるところ右に谷川が流れ、左に神明社の石段が見える。神域は集落から一段と高い場所にあり、杉木立を背にして本殿が建てられている。前には、天然記念物に指定されている一対のナギの大木が立っている。右側は庁屋で、秋の祭りには民俗文化財に指定されている三番叟が上演される。小規模ながら旧村社にふさわしい環境にある。
縁起
創立年月日は不詳。かつては火災に遭って多くの記録を失っている。
『豆州志稿』によれば、長禄三年(一四五九)の棟札に「神名難分、本願須田対島頭」とあり。また、慶長三年(一五九八)の札に「須田図書之助経営」とされているが、この二つの棟札は現存していない。明治十八年調査佐波神社祠官間野斉宮の報告によれば、長禄元年二月十一日(一四五七)再建より重修の棟札ありと記されているが長禄元年の棟札も現存しない。以上の諸記録の中でもっとも年代の古いものは長禄元年(一四五七)である。
現在当社には十二点の棟札が残されている。その中でもっとも古いと思われるものに次のものがある。
本願須田図書助 豆州仁科庄海名野村 同仇左衛門
大工鍛冶関采女正政繁 奉建立伊勢神明御宝殿前諸願成就皆令満足者也
大工窪田彦左衛門吉次 鈴木藤衛門 干時慶長拾五年庚戌九月十日敬白 祢宜六左衛門
その他、建立、重修、造立等に関する記録を遺した棟札の主なものとして次ぎのものがある。
1.奉建立勢陽天照大神宮与流氏諸願成就必矣 干時萬治二仲冬念五鳥(一六五九)
2.奉造立神明宮御神殿 延享三年十月十三日(一七四六)
3.宝暦五年九月十六日(一七五五)氏子四十九人が門前の土地その地を献納
4.文化三年七月吉日(一八〇六) 奉修大峯乗灯護摩供社頭安全攸
5.明治六年十月 奉斉神明社、合並社(栗原天神社・寺川駒形神社・岩谷戸八幡社・堀坂熊野社・一色山神社・祢宜畑子神社・白川三王社・大城八幡社・宮ケ原天神社)(註村社となる)
6.大正九年十一月四日 鳥居新設
7.昭和四年十月七日 奉納神明社昇格記念
8.昭和二十七年十一月四日 奉斉神明復興記念
9.年代不詳(大正末期から昭和初期) 奉鎮斉 神明社改築拝殿当社は曾て、式内社仲大歳神社とされた説があったがそれは謬である。仲は中村に由来するとしたのであろうが、往時中村は仁科庄の本郷に含まれており、(本郷には既に式内佐波神社があり)村に式内社が二社存在することはないのである。また口碑によれば「当社は式内にして、須田対島頭守広創建」とあるが須田対島頭守広は文亀、大永の十六世紀初頭の人であって、式内社を定めた延喜式の成立は十世紀であり、須田氏が式内社を創建することはあり得ないことである。
当社において、毎年十一月の秋祭りに奉納される三番叟は初演が享保年間即ち一七〇〇年代と伝えられ、三世紀にわたって伝承されている貴重な文化財である。
拝殿の張り紙より

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【由 緒 (History)】
『豆州志稿』巻之8に記される内容
【抜粋意訳】
仲大歳(ナカオホトシノ)神社
〔増〕神階帳 従四位上なかおほとしの明神
〔増〕賀茂郡松崎村下之神社ナル可シ〇在ニ那賀郡中村海名野(カイナノ)神明ト稱ス〔増〕此説非也
【原文参照】

秋山章 著 ほか『豆州志稿』巻之8,栄樹堂,明21-28. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/765147
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【神社の境内 (Precincts of the shrine)】
・神明神社 社殿

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・鳥居・ナギの木・勇義社

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・社頭

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【神社の境外 (Outside the shrine grounds)】
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この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)
この神社は 大和朝廷による編纂書〈六国史・延喜式など〉に記載があり 由緒(格式ある歴史)を持っています
〇『六国史(りっこくし)』
奈良・平安時代に編纂された官撰(かんせん)の6種の国史〈『日本書紀』『續日本紀』『日本後紀』『續日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代實録』〉の総称
〇『延喜式(えんぎしき)』
平安時代中期に編纂された格式(律令の施行細則)
〇『風土記(ふどき)』
『続日本紀』和銅6年(713)5月甲子の条が 風土記編纂の官命であると見られ 記すべき内容として下記の五つが挙げられています
1.国郡郷の名(好字を用いて)
2.産物
3.土地の肥沃の状態
4.地名の起源
5.古老の伝え〈伝えられている旧聞異事〉
現存するものは全て写本
『出雲国風土記』がほぼ完本
『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態
『延喜式神名帳(Engishiki Jimmeicho)』(927年12月編纂)に所載〈This record was completed in December 927 AD.〉
『延喜式(Engishiki)律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳(Engishiki Jimmeicho)』といい 当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社(式内社)の一覧となっています
・「官社(式内社)」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」
[旧 行政区分](Old administrative district)
(神様の鎮座数)東海道 731座…大52(うち預月次新嘗19)・小679[旧 国 名 ](old county name)
(神様の鎮座数)伊豆國 92座(大5座・小87座)
[旧 郡 名 ](old region name)
(神様の鎮座数)那賀郡 22座(並小)
[名神大 大 小] 式内小社
[旧 神社 名称 ] 仲大歳神社
[ふ り が な ](なかをほとしの かみのやしろ)
[Old Shrine name](Nakawohotoshi no kaminoyashiro)
【原文参照】

国立公文書館デジタルアーカイブス 延喜式 刊本(跋刊)[旧蔵者]紅葉山文庫https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F1000000000000004146&ID=M2014101719562090086&TYPE=&NO=画像利用
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【オタッキーポイント】(This is the point that Otaku conveys.)
あなたが この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します
大歳神(おほとしのかみ)について
大歳神は 記紀神話『古事記』によれば 須佐之男命と神大市比売命〈大山津見神の娘〉の間に生まれた御子神〈大年神(おほとしのかみ)〉で宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の兄弟神とされています
穀物や豊穣を司る神として信仰され 年神(歳神)とも呼ばれることがあります
「大歳神(おほとしのかみ)」を社名に持つ式内社について
延喜式内社 山城國 乙訓郡 大歳神社(大 月次 新嘗)(おほとしの かみのやしろ)
・大歳神社(京都市西京区大原野灰方町)
延喜式内社 大和國 高市郡 大歳神社 二座(おほとしの かみのやしろ ふたくら)
・大歳神社(橿原市石川町)
延喜式内社 攝津國 住吉郡 草津大歳神社(鍬靫)(くさつおほとしの かみのやしろ)
・〈旧鎮座地〉式内 草津大歳神社趾(大阪市住吉区苅田)
・〈合祀先〉大依羅神社(大阪市住吉区庭井)
・大歳神社〈住吉大社 境外摂社〉(大阪市住吉区住吉)
延喜式内社 和泉國 大鳥郡 大歳神社(貞・鍬)(をほとしの かみのやしろ)
・等乃伎神社(高石市取石)
〈等乃伎神社に合祀 大歳神社(高石市西取石)〉
延喜式内社 遠江國 長上郡 大歳神社(おほとしの かみのやしろ)
・大歳神社(浜松市中央区天王町)
・蒲神明宮(浜松市中央区神立町)
延喜式内社 駿河國 安倍郡 大歳御祖神社(おほとしみおやの かみのやしろ)
・静岡浅間神社(静岡市)
・別雷神社(静岡市)
延喜式内社 伊豆國 那賀郡 仲大歳神社(なかおほとしの かみのやしろ)
・神明神社(西伊豆町中)
・伊那下神社(松崎町松崎)
・仲神社(松崎町那賀)
・伊那上神社(松崎町宮内)
延喜式内社 但馬國 二方郡 大歳神社(おほとし かみのやしろ)
・大歳神社(美方郡新温泉町居組字宮ノ前)
延喜式内社 石見國 那賀郡 大歳神社(おほとしの かみのやしろ)
式内社 大歳神社について 所在は゛大年神社は當郡中 數多ありて 何れを式内と定め難し゛と 大年神社が多数あって決め難いとされます
・大年神社(江津市都野津町)
・大年神社(江津市和木町)
・大年神社(江津市渡津町塩田)
・大歳神社(江津市千田町大年迫)
・大歳神社 (浜田市元浜町)
・大歳神社(浜田市弥栄町小坂)
・大歳神社(浜田市大金町)
・大年神社(浜田市国分町)
・大歳神社(浜田市三隅町下古和)
・大歳神社(浜田市金城町波佐)
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【神社にお詣り】(Here's a look at the shrine visit from now on)
この神社にご参拝した時の様子をご紹介します
伊豆急行 河津駅から西伊豆町を目指して県道15号を西へ約33.5km 車での所要時間は45~50分程度
西伊豆町の海岸線から仁科峠へ向かう県道59号を 仁科川の河口から約1.5m程の進みます

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仁科川にかかる海名野橋(かいなのはし)には「神明社 式 三番叟」の案内板があり これを目印にして渡ると 仁科川の東岸の山裾になります

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山裾に石段があり その先には鳥居が建ちます
神明神社(賀茂郡西伊豆町中)に参着

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石段を上がると 樹齢゜およそ550年が経過しているとされる「ナギの木」があります

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鳥居の手前には゛民俗文化財 神明神社 式 三番叟゛の標識が立てられています

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一礼をしてから鳥居をくぐり抜けます

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拝殿にすすみます

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賽銭をおさめ お祈りをします
ご神威に添い給うよう願いながら礼 鎮まる御祭神に届かんと かん高い柏手を打ち 両手を合わせ祈ります

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参拝日は9月3日でしたが とても暑くて 木々の間から 強い夏の日差しが差し込んでいました

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社殿に一礼をして 境内を戻ります

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【神社の伝承】(I will explain the lore of this shrine.)
この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します
『神社覈録(Jinja Kakuroku)〈明治3年(1870年)〉』に記される伝承
式内社 仲大歳神社について 所在は゛中村海名(カイナ)野に在す、今 神明と稱す、゛〈現 神明神社(賀茂郡西伊豆町中)〉と記しています
【抜粋意訳】
仲大歳神社
仲は前に同じ〈仲は郡名に同じ、那賀と訓べし、〉大歳は於保登志と訓べし、
〇祭神 大歳神歟
〇中村海名(カイナ)野に在す、今 神明と稱す、
例祭
伴信友云、按に、仲は地名也、大歳神は大山祇神の外孫也、廣瀨神社の下考合すべし、
【原文参照】

鈴鹿連胤 撰 ほか『神社覈録』下編 ,皇典研究所,1902. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/991015
『神祇志料(Jingishiryo)』〈明治9年(1876)出版〉に記される内容
式内社 仲大歳神社について 所在は゛今 中村海名野にあり、神明といふ、゛〈現 神明神社(賀茂郡西伊豆町中)〉と記しています
【抜粋意訳】
仲大歳(ナカノオホトシノ)神社
今 中村海名野にあり、神明といふ、〔豆州志〕
盖 大年神を祭る、此は建速須佐之男命、大山津見神 女神 大市比賣に娶て生坐る神也、〔参酌古事記、延喜式、〕
【原文参照】

栗田寛 著『神祇志料』第12−14巻,温故堂,明9-20. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/815496
『特選神名牒(Tokusen Shimmyo cho)〈明治9年(1876)完成〉』に記される伝承
式内社 仲大歳神社について 所在は゛無記入゛不明
ただし 諸説を挙げています
゛仲ノ大歳ノ神社在ニ中村海名野゛〈現 神明神社(賀茂郡西伊豆町中)〉
゛伊那下神社と唱へたる賀茂ノ郡 松崎村下ノ宮゛〈現 伊那下神社(松崎町松崎)〉
゛仲神社゛〈現 仲神社(松崎町那賀)〉
゛縣の注進には江奈村の神社゛〈現 舟寄神社(松崎町江奈)〉
【抜粋意訳】
仲大歳(ナカノオホトシノ)神社
祭神
祭日
社格
所在今按 式社考證に豆志に云 仲ノ大歳ノ神社在ニ中村海名野〔今云 那賀郡仁科中村也〕亦 神明と稱す云々と有ど 仲ノ大歳は仲と同所の地名にして 必ず仲神社の近邊と聞ゆるに 此地〔仁科中村〕は彼 仲神社の地〔舊説の中村 今按の宮内村〕よりは所謂 江奈山を隔て各一區別ある所にて 古に仲と云し地内に非ること明瞭なれば 適はざる事判然なるに
因て考ふるに 舊説に伊那下神社と唱へたる賀茂ノ郡 松崎村下ノ宮なむ仲大歳神社なるべく思はる 此社は豆志に相傳ふ神功皇后 新羅を征し給ふ時に彼國人 皇后の御船を守護し奉りて長州豊浦に留り後此に鎭座す 故に額に唐大明神と書來れり云々と云るが如く
仲神社は舊説に伊那上神社と云る宮内村上宮なるべく 彼社とは僅に八町許を隔てゝ上宮下宮と唱へ來れるなど 緣由有て聞ゆるは更なり 此邊に當社より外に舊社と思はるるは有事無きを以て證とすべしとあるを 縣の注進には江奈村の神社と定められたるは疑はし 猶よく考べし
【原文参照】

教部省 編『特選神名牒』,磯部甲陽堂,1925. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1919019
神明神社(賀茂郡西伊豆町中)に「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

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