豊養稲荷大明神（松阪市豊原町）〈飯野高宮神山神社に合祀された　大櫛神社の旧鎮座地〉

豊養稲荷大明神（ほうよういなりだいみょうじん）は　延喜式内社　伊勢國 多氣郡 大櫛神社（おほくしの かみのやしろ）の旧鎮座地です　大櫛神社は　明治41年（1908）神山神社に合祀され　その後　豊原神社（昭和29年創立）に5社〈大櫛神社・三熊野神社・穂卸神社・宇気比神社・宇気比神社〉と共に分祀されています

1.ご紹介（Introduction）

　この神社の正式名称や呼ばれ方　現在の住所と地図　祀られている神様や神社の歴史について　ご紹介します

【神社名(Shrine name）】

豊養稲荷大明神（hoyouinari daimyojin shrine）

〈飯野高宮神山神社に合祀された　大櫛神社の旧鎮座地に祀られた稲荷〉

【通称名(Common name)】

【鎮座地　(Location)　】

三重県松阪市豊原町1195

【地　図 (Google Map)】

【御祭神　(God's name to pray)】

《主》稲荷神

【御神徳　(God's great power)】（ご利益）

【格　式　(Rules of dignity) 】

・『延喜式神名帳（engishiki jimmeicho ）927 AD.』所載社の旧鎮座地

【創　建　(Beginning of history)】

『勢陽五鈴遺響』８　飯野郡に記される内容

【抜粋意訳】

櫛田

　豐原の東六町許にあり　正税千百七十二石津領なり　今の豐原の舊とー邑にて　街道の後世變てより　賑富になりたるなり　故に大櫛神社も其地にあり　今は豐原を櫛田と私稱し　本邑を大櫛田と私稱す

【原文参照】

【由　緒　(History)】

揥水まちづくり協議会『揥水まちづくり協議会たより No. 37』より抜粋

シリーズ自治会だより (三)　豊原町　「豊原」という地名の由来について

豊原町 3町内藤木篤

現櫛田郵便局の土地には、津藩、豊原組大庄屋を務めた奥田清十郎家があった。 (昭和 56年破却 )奥田家の先祖は、源平合戦の中の木曾義仲追討の際、宇治川先陣争いで有名な佐々木高綱の子孫で近江国 (滋賀県)の奧田庄を治め、奥田の姓を唱えた。後に越前 (福井県)の豊原に移り、九代清十郎忠重の代に一族で櫛田川沿いの地に移り、そこを開拓して「豊原」と呼んだ。それが、「豊原」という地名のゆえんである。ちなみに、十五代清十郎( 1 7 0 3〜 8 3 )は漢学者として知られている奧田三角である。

「大櫛神社」と「櫛田大市」の碑について

旧 23号線 (今の県道鳥羽松阪線)の4車線拡張工事に伴い、取り壊された紅葉　屋旅館の筋向いに稲荷社(いなりやしろ)(豊養稲荷大明神)がある。その敷地内に「式内大櫛神社」と「櫛田大市」の二つの碑がある。
大櫛神社は、大彦命(おおひこのみこと)を祭神とする延喜式の神名帳に記載されている式内社であるが、明治 41年 ( 1 9 0 8年 )に山添の神山神社に合祀された。

その後、平成 6年に分祀され、現在は豊原神社に祀 (まつ)られている。

　櫛田大市の碑には、正面に「櫛田大市」、明治 32年 2月 5日創立、陰暦 1                         　   　       　  　 　   　 　 　2月25日、左側面には奧田亀蔵以下14名の発起人の名前が刻まれている。これらは当時の豊原の商工会員の名前である。かつて松阪は、 2月正月の慣わしがあったので、開催日は、1月25日であった。旧伊勢街道紅葉屋 (現在空き地である)前から東町 (現在の 3町内 )、茶屋町 (現在の 2町内)、立町 (現在の 1町内)の櫛田川堤防脇まで、約 2 0 0       メートルの間に露店が並んだ。これらの店は松阪露店商組合によるものであった。
露店には、 2月正月を迎えるための正月用品を売る店 (にんじん、ごぼう、たつくり、みかんなど)、子ども向けのお菓子の店 (飴玉、ニッキ、綿菓子、せんべいなど )や、凧を売る店があり、奴凧 (やっこだこ)が子ども達に人気があった。また商工会による福引が行われていた時期もあり、陶製の火鉢も景品にされていた。この日は安楽天神の初天神の日でもあり、近在から天神さん参りと大市めぐりを兼ねてくる人も多かった。この大市は太平洋戦争が始まる頃まで続いた。

揥水まちづくり協議会『揥水まちづくり協議会たより No. 92』より抜粋

伊勢街道を歩いてみた⑦

【豊養稲荷大明神】

豊原交差点から櫛田川の土手に向かって歩いていくと、左前方に赤い旗と赤い鳥居が見えてくる。櫛田では唯一の稲荷神社の豊養稲荷社だ。
鳥居の横には「式内大櫛神社」と「櫛田大市」の石碑が在る。

大櫛神社は大彦命を祭神としていたが、明治三九 (ー九〇六 )年に出された神社合祀令により、明治四一 (ー九〇八)年に山添町の神山神社に合祀された。その後、昭和二九年に現在の豊原神社が建てられた後、平成六年に神山神社から分祀され豊原神社にまつられている。

　これについても藤木篤さんが協議会たより N0. 37号に詳しく記載されているので活用させて頂いた。

　ところで、豊養稲荷社がいつごろ建てられたのだろう。手元の資料を見たが分からない。大櫛神社に併設されて建てられていたのか、大櫛神社が合祀された後に建てられたのか。推測するに、大櫛神社に併設されていたのであれば、合祀令により神山神社に合祀されたことになる。それであるならば現在の稲荷社は、昭和二九年ごろに建てられたのではないかと考えられる。

一方、当時の豊原商工会の人たちは講を作って、愛知県の豊川稲荷に詣でていたという。つまり、稲荷社は、豊原にはまだ無かったと考えられる。合祀により身近に神社が無くなった。商売人にとって、拠り所を無くしたようなものである。そのことから稲荷社を建てることは当然の成り行きだったと考えられ、大櫛神社が合祀されてから、その敷地の一部に豊養稲荷社を立てたと考えられる。しかし、合祀令の出ているなかでどのようにして立てることができたのか　　　　　が疑問に残る。

　いずれにしても、資料があれば解決するのだが・・・・。

櫛田大市の石碑は、この通りで市が開かれていたことを示すもので、石碑には櫛田大市明治三二年二月五日創立陰暦十二月二五日とあり、初めて市を開いた日を記している。
大市については、二月正月に合わせて陰暦の十二月二五日に開催され大いに賑わっていたようである。

松坂市役所HP　揥水住民自治協議会より
https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/jyuminkyogikai/list517-1762.html

【神社の境内　(Precincts of the shrine)】

【神社の境外　(Outside the shrine grounds)】

・豊原神社（松阪市豊原町）

〈大櫛神社の旧鎮座地は　明治41年2月11日　神山神社〈現 飯野高宮神山神社（松阪市山添町）〉に合祀されました
豊原神社（松阪市豊原町）は　飯野高宮神山神社から5社〈大櫛神社・三熊野神社・穂卸神社・宇気比神社・宇気比神社〉を分祀して　昭和29年に創立されました　現在は　飯野高宮神山神社（松阪市山添町）の飛び地境内社となっています〉

この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)

この神社は　大和朝廷による編纂書〈六国史・延喜式など〉に記載があり　由緒（格式ある歴史）を持っています

〇『六国史（りっこくし）』
　　奈良・平安時代に編纂された官撰（かんせん）の6種の国史〈『日本書紀』『續日本紀』『日本後紀』『續日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代實録』〉の総称

〇『延喜式（えんぎしき）』
　　平安時代中期に編纂された格式（律令の施行細則）

〇『風土記（ふどき）』
　『続日本紀』和銅6年（713）5月甲子の条が　風土記編纂の官命であると見られ　記すべき内容として下記の五つが挙げられています

1.国郡郷の名（好字を用いて）
2.産物
3.土地の肥沃の状態
4.地名の起源
5.古老の伝え〈伝えられている旧聞異事〉

現存するものは全て写本

『出雲国風土記』がほぼ完本
『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載〈This record was completed in December 927 AD.〉

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』といい　当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社（式内社）の一覧となっています

・「官社（式内社）」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）東海道　731座…大52（うち預月次新嘗19）・小679

[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）伊勢國　253座（大18座・小235座）

[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）多氣郡　52座（並小）

[名神大 大 小]　式内小社

[旧　神社　名称 ] 大櫛神社
[ふ　り　が　な ]（おほくしの かみのやしろ）
[Old Shrine name]（Ohokushi no kaminoyashiro）

【原文参照】

【オタッキーポイント】（This is the point that Otaku conveys.）

あなたが　この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します

延喜式内社　伊勢國 多氣郡 大櫛神社（おほくしの かみのやしろ）の論社

・豊養稲荷大明神（松阪市豊原町）
〈飯野高宮神山神社に合祀された　大櫛神社の旧鎮座地〉

・飯野高宮神山神社（松阪市山添町）
〈大櫛神社の旧鎮座地は　飯野高宮神山神社に合祀された〉

・豊原神社（松阪市豊原町）
〈飯野高宮神山神社に合祀された　大櫛神社の旧鎮座地は　飯野高宮神山神社から豊原神社に遷座合祀〉

【神社にお詣り】(Here's a look at the shrine visit from now on)

この神社にご参拝した時の様子をご紹介します

近鉄山田線　櫛田駅から東南方向へ約400m　徒歩6～7分程度

旧伊勢街道沿いにあります

豊養稲荷大明神（松阪市豊原町）〈飯野高宮神山神社に合祀された　大櫛神社の旧鎮座地〉に参着

朱色の稲荷鳥居が立ち並んでいます

鳥居の横には「式内大櫛神社」の石碑があり　ここが大櫛神社の旧鎮座地である事が示されています

稲荷鳥居をくぐり抜けて

社殿にすすみます

賽銭をおさめ　お祈りをします
ご神威に添い給うよう願いながら礼　鎮まる御祭神に届かんと　かん高い柏手を打ち　両手を合わせ祈ります

【神社の伝承】(I will explain the lore of this shrine.)

この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します

『神社覈録（Jinja Kakuroku）〈明治3年（1870年）〉』に記される伝承

式内社　大櫛神社について　祭神・在所は詳らかではない　と記しています

【抜粋意訳】

大櫛神社

大櫛は於保久志と訓べし

○祭神在所等詳ならず
　勢陽俚諺に、櫛田村、一説 豊原村、又 稲木村どいへり、此皆 飯野郡に属したる村々也、

【原文参照】

『神祇志料（Jingishiryo）』〈明治9年（1876）出版〉に記される内容

式内社　大櫛神社について　所在は゛今 豊原村 袖引社 盖是也゛〈現　豊養稲荷大明神（松阪市豊原町）〉と記しています

【抜粋意訳】

大櫛神社

今 豊原村 袖引社 盖是也、〔伊勢式内社検録、津藩神社取調、〕

凡　本郡五十二座の神並に斎宮祈年祭に預る、〔延喜式〕

【原文参照】

『特選神名牒（Tokusen Shimmyo cho）〈明治9年（1876）完成〉』に記される伝承

式内社　大櫛神社について　所在は゛三重縣飯野郡豊原村（飯南郡櫛田村 郷社 神山神社に合併）゛〈現　飯野高宮神山神社（松阪市山添町）〈大櫛神社の旧鎮座地は　飯野高宮神山神社に合祀された〉〉と記しています

【抜粋意訳】

大櫛神社

祭神
祭日　六月十四日
社格　村社

所在　三重縣飯野郡豊原村（飯南郡櫛田村 郷社 神山神社に合併）

【原文参照】

豊養稲荷大明神（松阪市豊原町）〈飯野高宮神山神社に合祀された　大櫛神社の旧鎮座地〉に「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

伊勢国　式内社　253座（大18座・小235座）についてに戻る