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産土神(うぶすながみ)とは?意味・氏神との違いと調べ方

産土神(うぶすながみ)とは、人が生まれた土地を守り、その土地で生まれた人と結ばれる神です。産土・産子の意味、氏神・鎮守神・地主神との違い、歴史上の用法、転居や里帰り出産の場合の考え方、自分の産土神社を調べる手順まで、史料と神社の実例をもとに解説します。

産土神の基本情報

項目 内容
用語 産土神
読み方 うぶすながみ
別表記 産土、産土大神、産神
英語表記 Ubusuna-gami / tutelary deity of one’s birthplace(説明的英訳)
意味 人が生まれた土地を守り、その土地で生まれた人と結ばれる神
分類 土地・出生地との関係を示す神の呼称
対概念 特になし
関連概念 産子、氏神、氏子、鎮守神、地主神、崇敬神社

第1章 産土神とは

1-1 産土神の意味

産土神(うぶすながみ)とは、人が生まれた土地を守り、その土地で生まれた人と結ばれる神です。「産土」は生まれた土地・本拠を意味し、産土神と結ばれる人は「産子(うぶこ)」と呼ばれます。

岡山県神社庁の神道用語辞典は、産土神を「自分の生まれた土地を守護する神」とし、氏族を通じて結ばれる氏神・氏子に対して、土地を媒介として結びつくのが産土神であると説明しています。この定義から分かるように、産土神という呼称の中心にあるのは、祭神の神名ではなく、人と土地との関係です。

1-2 産土神は特定の神の名前ではない

「産土神」は、天照大御神や大国主神のような特定の神の固有名ではありません。ある神社に祀られる神が、その土地やそこで生まれた人との関係から産土神と呼ばれます。そのため、同じ神が、ある説明では産土神、別の説明では氏神や鎮守神と呼ばれることがあります。

「どの神が産土神になるのか」は神名だけでは決まりません。神社の由緒、旧村の範囲、祭礼区域、その土地の人々が用いてきた呼称などを確認する必要があります。

1-3 氏神・鎮守神との違い

産土神・氏神・鎮守神は、現在では地域を守る神という意味で重なって使われることがあります。しかし、本来注目している関係は同じではありません。産土神は出生地と人、氏神は氏族と神、鎮守神は一定の場所や施設と神との関係を表す呼称です。

産土神・氏神・鎮守神の基本的な違い

呼称 本来重視される関係 対応する人・範囲 現在の用法
産土神 出生地・本拠と人 産子 出生地または地域の守護神
氏神 氏族・系譜と神 氏子 居住地域の守護神を指すことが多い
鎮守神 一定の区域・施設と神 国、村、寺院、城郭など 地域の守護神として氏神・産土神と重なる場合がある

第2章 「産土」の読み方・表記・語義

2-1 「産土」は「うぶすな」と読む

「産土」は一般に「うぶすな」と読みます。「産土神」は「うぶすながみ」と読み、神社名などでは「産土大神(うぶすなのおおかみ)」と称されることもあります。古い文献や地域の記録では、同じ内容を示す語に異なる文字が当てられる場合があるため、表記だけで別の信仰と判断することはできません。

2-2 「産土」が示す土地

産土は、生まれた土地、出生地、本拠、故郷などを意味する語として説明されます。ただし、現代の住民票や行政区画だけで一律に区切られる土地ではありません。史料の中では、旧村、郷、荘園、寺社の所領や祭祀の及ぶ範囲など、その時代の土地認識を背景に用いられます。

したがって、現在の町名が同じであることや、神社までの距離が近いことだけをもって、歴史上の産土の範囲を確定することはできません。

2-3 「うぶ」と「すな」の語源説明

「うぶ」を「生まれること」、「すな」を「土地」と分ける説明は、産土の意味を理解するうえでは分かりやすいものです。しかし、語源を細かく分解した説明には、後世の解釈や伝承的説明が含まれる場合があります。記事では、現在確認できる辞典類が示す「生まれた土地・本拠」という語義を基礎とし、確証のない語源説を歴史的事実として扱いません。

2-4 産土神・産土社・産土神社の違い

産土神は神を指す呼称です。産土社・産土神社は、その産土神を祀る社を指します。ただし、神社の正式名称に「産土」の文字が含まれているとは限りません。八幡神社、天神社、稲荷神社など、さまざまな社号を持つ神社が、その地域の由緒や祭祀上の関係から産土神社と呼ばれることがあります。

第3章 史料にみる産土神

3-1 史料を年代と文脈から読む

産土神の歴史を調べるときは、現代の定義を古代へそのまま遡らせない注意が必要です。古代に土地を守る神への信仰があったことと、後世の文献に「産土」「産土神」という語が現れることは、分けて考えなければなりません。

記事や神社由緒に「古代から産土神として祀られた」とある場合も、その根拠が古代史料なのか、近世の地誌なのか、近代の神社明細帳や後世の由緒書なのかを確認します。創建年代と、「産土神」という呼称を確認できる年代は一致しない場合があります。

3-2 中世・近世の寺社史料と産土

中世以降の寺社縁起、日記、地誌などでは、産土神が故郷や居住地を守る神として語られます。また、寺院の鎮守が周辺の人々の産土神とされるような例もあり、神社と寺院を現在の制度だけで分けて理解できない場合があります。

こうした記録では、産土神が出生した一個人だけの守護神として語られる場合と、一定の土地とそこに暮らす人々の守護神として語られる場合があります。文脈を確認せず、どちらか一方に限定することは適切ではありません。

3-3 近世地誌と神社由緒

近世の地誌や村方文書では、「某村産土」「産土神」「氏神」「鎮守」などの語が用いられます。同じ神社について複数の呼称が併記されることもあり、産土神と氏神の区別がすでに曖昧になっていた地域が確認できます。

その一方で、氏族の祖神としての氏神と、土地の守護神としての産土神が区別される例もあります。用語の変化は全国一様ではなく、地域と史料ごとに確認する必要があります。

3-4 近代の神社明細帳と氏子制度

明治期には神社の制度的な整備が進み、行政上・神社運営上は「氏神」「氏子」という呼称が広く用いられるようになりました。その結果、従来は産子と呼ばれた土地の人々も氏子と呼ばれ、産土神と氏神がほぼ同じ意味で説明されることが増えました。

ただし、近代の制度によって産土信仰が突然生まれたわけではありません。以前から存在した土地と人との祭祀上の関係が、氏神・氏子という用語へ整理または包摂されたと理解する必要があります。

第4章 産土信仰の歴史

4-1 土地の守護神と産土神

人々が山、森、水、田畑、村境などに神聖さを認め、土地の安泰や生業の安全を祈る信仰は、各地に広く見られます。しかし、すべての土地神を産土神と呼べるわけではありません。産土神という呼称には、土地を守るという働きに加えて、その土地で生まれた人との結びつきが含まれます。

4-2 中世に広がる地縁的な結びつき

中世には、荘園、村、都市の町など、一定の土地を基盤とした人々の祭祀が展開しました。氏族の祖神を祀る氏神信仰だけでなく、居住地の鎮守や産土をともに祀る関係が重要になり、氏神・産土神・鎮守神の意味が接近していきます。

WEB版『新纂浄土宗大辞典』の「産土神」項目も、中世以降の村落社会の形成に伴い、土地の鎮守である産土神と氏族の守護神であった氏神が次第に混同されたと説明しています。

4-3 近世の村・町と産土神

近世には、村や町の祭礼を担う範囲と産土神の守護範囲が重なり、産子と氏子が同義に近い形で使われる例が増えます。初宮参りなど、子どもの誕生と土地の神との関係を表す習俗も、産土信仰と結びついて説明されました。

もっとも、祭礼の参加範囲、神社の維持を担う家々、出生地との個人的な関係は、必ずしも完全に一致しません。地域史を読むときは、産子・氏子という呼称だけで組織の実態を決めず、名簿、当番、祭礼記録などを併せて確認します。

4-4 近代から現代へ

近代以降は氏子という用語が一般化し、現代の神社案内でも、氏神、産土神、鎮守神が地域の守護神という意味で重ねて説明されることがあります。神社本庁は、産土神を「人々が生まれ育った土地の守護神」、鎮守神を国・地域・寺院・王城などの場所を守護する神と説明しながら、両者が次第に氏神と同義で用いられるようになったとしています。

現在、三語を完全な同義語とする説明と、歴史的な違いを重視する説明が併存するのは、この長い用語変化によるものです。

第5章 産土神と産子

5-1 産子とは

産子(うぶこ)とは、産土神に守られる土地に生まれ、その神と結ばれる人を指す呼称です。産土神と産子は、氏神と氏子に対応する関係として説明されます。

5-2 産子と氏子の違い

本来の意味を整理すると、産子は出生地との地縁によって産土神と結ばれる人、氏子は氏族の祖神や氏に縁の深い神と結ばれる人です。しかし、氏神が地域の守護神を意味するようになると、その地域に住む人も氏子と呼ばれるようになりました。

現代では「産子」を日常的に用いる地域は限られ、「氏子」が地域の神社と関係を持つ人々の一般的な呼称となっています。そのため、古文書に産子とある場合は、現在の氏子と同じ意味だと即断せず、その文書が作られた年代と地域を確認します。

5-3 初宮参りと産土神

子どもの誕生後に神社へ参拝する初宮参りは、氏神・産土神への奉告や、子どもの健やかな成長を祈る人生儀礼として説明されます。ただし、初宮参りをした神社が自動的に産土神社になるという全国共通の制度はありません。

家の慣習により、出生地の神社、現住所の氏神神社、両親や祖父母と縁のある神社などへ参拝する場合があります。初宮参りの記録は重要な手掛かりですが、それだけで歴史的な祭祀区域まで確定できるわけではありません。

5-4 産土神と安産信仰

「産」という文字や出生との関係から、産土神が安産・子育ての信仰と結びつく例はあります。産土神社の砂を出産時の守りとする習俗なども伝えられています。しかし、産土神という呼称そのものが、安産だけを神徳とする神を意味するわけではありません。

第6章 出生地・現住所と産土神

6-1 「生まれた土地」は一律に決められない

現代では病院で出産することが一般的であり、出生届に記載された出生場所、出生時の家の住所、両親が暮らしていた地域が異なる場合があります。歴史的な産土は、病院からの直線距離だけで決められるものではありません。

産土神社を調べるときは、出生時に家族が生活の本拠としていた住所、旧町名・旧村名、家で伝えられてきた神社、初宮参りをした神社などを確認します。そのうえで、当該地域の神社や郷土資料と照合するのが適切です。

6-2 里帰り出産の場合

里帰り出産では、出産した病院の所在地、母親の実家、両親の生活拠点が別々になることがあります。この場合、病院に最も近い神社を産土神社と断定することはできません。

家の伝承や地域の慣習によって考え方が異なるため、出生時の生活の本拠、初宮参り、両家の神社との関係を確認します。どうしても一社に決められない場合、根拠のない自動判定で断定するより、複数の縁を大切にする考え方もできます。

6-3 転居すると産土神は変わるのか

産土神を出生地との結びつきから捉える信仰では、転居後も生まれた土地の神との縁は続くと考えられます。一方、現在住んでいる地域には、その地域の氏神神社があります。転居によって産土神との関係を否定したり、出生地の神社と現住所の神社のどちらか一方だけを選んだりする必要はありません。

6-4 産土神社と崇敬神社

神社本庁は、居住地域の氏神神社に対し、地縁や血縁以外の特別な信仰によって崇敬する神社を崇敬神社と説明しています。出生地を離れた人が故郷の神社を大切に参拝する場合、その神社との関係を崇敬という言葉で説明することもできます。

一人の人が氏神神社と崇敬神社の双方を信仰しても差し支えないとされます。産土神社、現在地の氏神神社、個人的に崇敬する神社は、互いに排他的な関係ではありません。

第7章 産土神社を調べる方法

7-1 出生時の住所と家の記録を確認する

最初に確認するのは、出生時に家族が生活の本拠としていた住所です。母子手帳、出生届の控え、戸籍関係書類、古い年賀状、アルバム、家族の記憶などが手掛かりになります。病院名だけでなく、当時の自宅住所を確認します。

7-2 旧町名・旧村名を確認する

市町村合併、住居表示、区画整理によって、現在の町名と歴史上の村境が異なることがあります。古い地図、市町村史、字名、旧村名を調べると、どの神社の祭礼区域に属していたかを確認しやすくなります。

7-3 氏子区域・祭礼区域を確認する

神社までの距離が近くても、道路、川、旧村境などを境に氏子区域が分かれている場合があります。反対に、少し離れた神社が旧村全体の氏神・産土神として祀られている場合もあります。

例祭の当番区域、神輿の巡行範囲、氏子総代を出す地区、祭礼への参加地域などは、神社と土地の関係を知る手掛かりになります。

7-4 神社や都道府県神社庁へ問い合わせる

問い合わせる際は、「産土神を教えてください」とだけ尋ねるのではなく、出生時の住所、旧町名、出生年、初宮参りをした神社、家で伝わる氏神など、確認できた情報を伝えます。神社によっては氏子区域を公開していない場合や、境界を明確に定めていない場合もあります。

7-5 郷土資料を調べる

市町村史、郡誌、村誌、神社誌、神社明細帳、寺社縁起、古地図、祭礼記録などを確認します。郷土資料館、地域の図書館、都道府県立図書館、国立国会図書館デジタルコレクションなどが利用できます。

7-6 自動判定だけで断定しない

生年月日、方角、出生地からの距離だけで産土神を自動判定する情報もありますが、歴史上の旧村境、祭礼区域、地域の由緒を反映しているとは限りません。結果を参考にする場合も、神社の由緒や地域資料と照合してください。

産土神社を調べるときの確認順序

順序 確認内容 主な資料・問い合わせ先
1 出生時の生活の本拠 母子手帳、家族の記録、当時の住所
2 旧町名・旧村名 古地図、市町村史、郷土資料
3 氏子区域・祭礼区域 神社、祭礼記録、地域の関係者
4 神社の由緒と呼称 神社由緒書、神社誌、神社明細帳
5 複数資料の一致 神社、図書館、郷土資料館、都道府県神社庁

第8章 産土神と関連する代表的な神社

産土神は固有の神名ではないため、代表例を確認するときは「その神社がいつから産土神と呼ばれたのか」「どの土地・人々にとっての産土神なのか」を見る必要があります。ここでは、Shrine Heritagerの公開記事で、由緒や地誌に産土神との関係が記される例を取り上げます。

8-1 小社神社〈皇大神宮(内宮)末社〉

小社神社(おごそじんじゃ)は、『皇太神宮儀式帳』に所載される皇大神宮末社です。中世に社地が不明となったのち、明治期に小社村の産土神を旧地として再興された経緯が伝えられています。

この例では、古代史料に神社名が見えることと、明治期に「小社村の産土神」を旧地に比定したことを区別して読む必要があります。古社の再興に際して、地域の産土神との関係が社地比定の根拠となった例です。

小社村の産土神と皇大神宮末社再興の関係を伝える記事です。

URL: https://shrineheritager.com/ogoso-shrine/

小社村の産土神と伝える小社神社
小社神社〈皇大神宮(内宮)末社〉

小社神社(おごそじんじゃ)〈皇大神宮(内宮)末社〉は 『皇太神宮儀式帳(こうたいじんぐうぎしきちょう)』〈延暦23年(804)〉に所載される古社です 中世に頽廃して社地も不明となりましたが 明治13年(1880)小社村の産土神を以て本社の舊地と爲して再興されたものです

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8-2 御坂神社(三木市志染町御坂)

御坂神社(みさかじんじゃ)は、志染の里の氏神として崇敬され、由緒書では周辺地域の産土神・鎮守として説明されています。また、近代の神社関係資料には、志染庄十村の産土神とする記述が見られます。

一つの神社が氏神・産土神・鎮守という複数の呼称で語られる例であり、それぞれが別の祭神を意味するのではなく、神社と土地・住民との関係を異なる面から示しています。

氏神・産土神・鎮守という呼称が重なる御坂神社の由緒を紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/misaka-sha/

志染庄十村の産土神と伝える御坂神社
御坂神社(三木市志染町御坂)〈播磨国風土記 三坂社の神・延喜式内社 御坂神社〉

御坂社(みさかしゃ)は 『播磨国風土記』「この土地の水流(みなが)は 甚だ美しい」と 履中天皇が許曽社で勅した故に美囊(みなぎ)となり 阿波国の和那散で食した信深貝(しじみがい)を見た故に 志深(しじみ)里となり 三坂社の神が坐すと記される 延喜式内社 播磨國 美嚢郡 御坂神社(みさかの かみのやしろ)の有力な論社です

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8-3 田宮寺神社〈田乃家外城田神社〉

田宮寺神社(たみやじじんじゃ)は、田宮寺の鎮守であった天神社を前身の一つとし、明治期の合祀を経て現在に至る神社です。関連する田乃家神社の旧社地をめぐる考証では、田宮寺の産土神であった神社との関係が論じられています。

この例は、寺院の鎮守、村の産土神、式内社の旧社地比定、近代の合祀が重なるため、単純に一つの由緒へまとめることができません。「産土神」という記述が、社地の比定や地域の祭祀史を考える手掛かりになる例です。

寺院鎮守と地域の産土神、近代の合祀との関係をたどる記事です。

URL: https://shrineheritager.com/tamiya-shrine/

田宮寺の鎮守と産土神の関係を伝える田宮寺神社
田宮寺神社〈田乃家外城田神社〉(玉城町田宮寺)

田宮寺神社(たみやじじんじゃ)は 村社 田乃家外城田神社と云い 元 田宮寺鎮守神 天神社のことで 明治四十二年 合祀されたもの この天神社が 皇大神宮摂社の田乃家神社(たのへじんじゃ)だとも云い 境内には゛御船殿奮趾゛往昔 神宮禰宜 荒木田氏により 式年遷宮毎に御船代を奉納した遣跡もあり 神宮との深い繋がりがあります

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8-4 代表例から分かること

三つの例はいずれも、産土神が単に「出生地から一番近い神社」を意味するものではないことを示しています。旧村の範囲、氏神祭、寺院鎮守、社地再興、合祀など、土地ごとの歴史の中で産土神という呼称が用いられています。

代表例にみる産土神との関係

神社 産土神との関係 読む際の注意
小社神社 小社村の産土神を古社の旧地として再興 古代の創祀と明治期の社地比定を区別する
御坂神社 志染庄十村の産土神と記される 氏神・産土神・鎮守の呼称が重なる
田宮寺神社 寺院鎮守・村の産土神・旧社地比定が関係 合祀前後の神社と由緒を分けて考える

第9章 産土神を理解する際の注意点

9-1 最寄りの神社とは限らない

産土神社は、出生地から距離が最も近い神社とは限りません。旧村、河川、街道、祭礼区域などによって、神社と土地との関係が形づくられてきたためです。

9-2 すべての産土神が安産の神とは限らない

出生や子育てに関する信仰を持つ産土神社はありますが、産土神は神徳の種類ではなく、土地と人との関係を示す呼称です。主祭神や神社固有の信仰は、それぞれの由緒から確認します。

9-3 生年月日や方角だけでは決まらない

産土神を生年月日、方角、距離だけから決める全国共通の神社制度は確認できません。歴史的な産土神社を調べる目的であれば、地域史料や神社の由緒を優先します。

9-4 氏神・鎮守神と完全に分けられない場合がある

概念上は違いを整理できますが、実際の神社由緒では三語が同じ神社を指すことがあります。用語の違いを理解することと、現地で重なって用いられてきた歴史を認めることは両立します。

9-5 「産土神」と記された年代を確認する

古代創建と伝わる神社でも、「産土神」という記述自体は近世・近代の史料に初めて確認される場合があります。神社の創建年代、現社地への遷座年代、由緒書の成立年代を分けて記載することが大切です。

第10章 よくある質問(FAQ)

Q1 産土神とは簡単にいうと何ですか

人が生まれた土地を守り、その土地で生まれた人と結ばれる神です。特定の神名ではなく、神と出生地・人との関係を表す呼称です。

Q2 産土神と氏神は同じ神ですか

本来は異なります。産土神は出生地との地縁、氏神は氏族との血縁・系譜を中心とする呼称です。ただし、氏神が地域の守護神を意味するようになったため、現在では同じ神社を指すことがあります。

Q3 産土神と鎮守神はどう違いますか

産土神は出生地と人との関係を重視します。鎮守神は国、地域、寺院、城郭など一定の場所や施設を守る神です。地域の鎮守が、その土地で生まれた人の産土神とされる場合もあります。

Q4 産土神は一生変わらないのですか

出生地との縁は転居後も続くとする信仰があります。一方、現在住む地域の氏神神社も大切にできます。全国共通の制度として「必ず一生一社だけ」と決められているわけではありません。

Q5 里帰り出産の場合の産土神はどこですか

出産した病院に最も近い神社だけで決めることはできません。出生時の生活の本拠、家の伝承、初宮参り、旧村と祭礼区域を確認し、関係する神社へ問い合わせます。

Q6 最寄りの神社が産土神社ですか

必ずしもそうではありません。旧村境や氏子区域によって、近くの神社ではなく少し離れた神社と結ばれている場合があります。

Q7 自分の産土神社が分からない場合はどうしますか

出生時の住所と旧町名を調べ、神社、市町村史、郷土資料館、地域の図書館、都道府県神社庁などへ確認します。複数の神社が候補になる場合は、根拠のない推測で一社に断定しません。

Q8 産土神は安産の神ですか

安産や子育てと結びつく例はありますが、すべての産土神が安産のみを神徳とするわけではありません。産土神の基本的な意味は、出生地を守る神です。

第11章 Shrine Heritager編集部考察

産土神を調べる作業は、現在地から最も近い神社を探すだけでは完結しません。出生時の住所、旧村、祭礼区域、家の伝承、神社由緒を重ねることで、人と土地との歴史的な結びつきが見えてきます。

一方、史料が失われ、産土神社を一社に確定できない地域もあります。その場合に大切なのは、不確かな情報を断定へ変えないことです。確認できた事実と伝承を分け、出生地の神社、現在地の氏神神社、個人的に崇敬する神社との縁を、それぞれ丁寧に捉えることが望まれます。

第12章 関連項目(See also)・内部リンク

産土神を理解するための関連項目

関連項目 URL 産土神との関係
相殿 https://shrineheritager.com/aidono/ 一つの社殿に複数の神が祀られる場合の位置づけを確認できます。
小社神社 https://shrineheritager.com/ogoso-shrine/ 小社村の産土神と皇大神宮末社の再興との関係を確認できます。
御坂神社 https://shrineheritager.com/misaka-sha/ 氏神・産土神・鎮守という呼称が重なる地域の実例です。
田宮寺神社 https://shrineheritager.com/tamiya-shrine/ 寺院鎮守、村の産土神、近代の合祀との関係を確認できます。

第13章 参考文献

本記事の定義・歴史・比較・代表例の確認には、次の資料を参照しました。

  • 神社本庁「氏神さまについて」
  • 神社本庁「氏神さまと崇敬神社」
  • 岡山県神社庁「神道用語辞典」
  • 八木透「産土神」WEB版『新纂浄土宗大辞典』
  • 柳田国男「氏神と氏子」『柳田国男全集』第14巻、筑摩書房、1990年
  • 『皇太神宮儀式帳』
  • 『神宮典略』
  • 『神社明細帳』各関係項目
  • Shrine Heritager「小社神社〈皇大神宮(内宮)末社〉」
  • Shrine Heritager「御坂神社(三木市志染町御坂)」
  • Shrine Heritager「田宮寺神社〈田乃家外城田神社〉」

第14章 External Links(外部リンク)

神社本庁「氏神さまについて」

氏神が氏族の守護神から地域の守護神へと意味を広げ、産土神・鎮守神と同義に近い形で用いられるようになった経緯を説明しています。

URL: https://www.jinjahoncho.or.jp/shinto/ujigami/

神社本庁「氏神さまと崇敬神社」

産土神・産子と氏神・氏子の関係、居住地域の氏神神社と個人が特に信仰する崇敬神社との違いを確認できます。

URL: https://www.jinjahoncho.or.jp/shinto/sukeijinja/

岡山県神社庁「神道用語辞典」

産土神を、生まれた土地を守護する神と定義し、産子、氏神、氏子との関係を簡潔に説明しています。

URL: https://www.okayama-jinjacho.or.jp/shinto/term/

WEB版『新纂浄土宗大辞典』「産土神」

産土神と出生・産子との関係、中世から近世にかけて氏神との区別が曖昧になった歴史を解説しています。

URL: https://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/産土神

第15章 更新履歴(Revision History)

産土神の記事更新履歴

日付 変更内容
2026年8月26日 Edition 1 Official Master V5.5制作規程に基づき全面改訂。定義、語義、史料、歴史、産子、出生地と転居、調査方法、代表例、FAQ、関連項目、参考文献、外部リンクを再構成しました。
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