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本殿(ほんでん)とは何か―役割・構造・建築形式を解説

本殿(ほんでん)とは、祭神を奉斎し、神座を設けるための中心的な社殿です。本記事では、御神体・神座との関係、拝殿・幣殿との違い、平入・妻入、神明造・大社造・流造などの建築形式、本殿を設けない神社、造替と文化財としての見方を、具体例とともに解説します。

本殿の基本情報

用語 本殿
読み方 ほんでん
別表記 御本殿・本社本殿など
英語表記 Honden / Main sanctuary
意味 祭神を奉斎し、神座を設けるための中心的な社殿
分類 神社建築・社殿
対概念 特になし
関連概念 神座・神体・御神体・内陣・拝殿・幣殿・正殿・社殿

第1章 本殿とは

1-1 本殿の基本的な意味

本殿(ほんでん)とは、神社において祭神を奉斎し、神座を設けるための中心的な社殿です。神社本庁は御本殿を「神さまがお鎮まりになる場」と説明しています。

参拝者が本殿の前方にある拝殿で拝礼する神社では、本殿は参拝者が日常的に入る建物ではありません。本殿の御扉は通常閉じられ、神職であっても、定められた祭儀や奉仕を除いてみだりに立ち入らない空間とされています。

ただし、すべての神社が同じ社殿構成を持つわけではありません。本殿と拝殿がそれぞれ独立する神社もあれば、幣殿などを介して連続する神社、複数の本殿を並べる神社もあります。また、山などを神体として拝し、本殿を設けない神社もあります。

1-2 本殿と御神体は同じものではない

本殿は建物です。一方、御神体は、神霊の依りつく対象として尊ばれるものを指します。鏡・剣・玉・神像などを御神体とする例がありますが、その形態や呼称は神社によって異なります。

したがって、「本殿の中に御神体がある」という説明は多くの神社に当てはまりますが、本殿と御神体を同一のものとして扱うことはできません。また、御神体の内容が一般に公開されていない神社も少なくありません。

1-3 本殿と神座の関係

神座(しんざ)は、神が鎮まる座を意味します。本殿の中心的な役割は、単に御神体を収めることではなく、祭神を奉斎する神聖な場所を設けることにあります。

御神体、神座、本殿は密接に関係しますが、それぞれ意味が異なります。個別の神社を調べる場合は、神社の公式説明、祭神に関する記録、文化財資料などを確認する必要があります。

第2章 本殿という名称と関連する呼称

2-1 「本殿」という語

「本殿」は、神社の中心となる殿舎を示す語として用いられます。ただし、現在一般に使われる「本殿」という名称を、そのまま古代のすべての神社へ当てはめることは適切ではありません。史料や神社によって、殿・神殿・正殿・宝殿などの語が用いられることがあります。

2-2 正殿・神殿・宝殿との違い

正殿は、中心となる殿舎を意味する語です。伊勢の神宮では、内宮・外宮の中心となる殿舎について「正殿」の名称が用いられます。このため、伊勢の神宮の正式名称を説明する場合、一般的な呼称である「本殿」だけに置き換えず、「正宮」「正殿」という固有の名称を尊重する必要があります。

神殿や宝殿も、本殿に相当する建物を示す場合があります。しかし、宝物を収蔵する建物など、別の意味で用いられる可能性もあるため、名称だけで建物の役割を断定することはできません。

2-3 本宮・本社・本殿の違い

本宮や本社は、神社そのもの、または中心となる宮を指すことがあります。これに対して、本殿は基本的に建物を示します。

たとえば「本宮へ参拝する」という場合は神社や宮を指しますが、「本殿を修理する」という場合は建造物を指します。ただし、名称の使い方は神社や史料によって異なるため、個別の用例を確認することが重要です。

2-4 摂社・末社の本殿

本殿という語は、本社の建物だけに用いられるとは限りません。文化財の指定名称では、「摂社○○神社本殿」「末社○○神社本殿」のように、摂社・末社の中心社殿についても本殿と記載されます。

第3章 本殿の成立と歴史

3-1 社殿を必要としない祭祀

日本の神祀りでは、山・森・岩・滝・島などが神の鎮まる場所、または祭祀の対象として尊ばれてきました。このような祭祀では、現在いう本殿に当たる常設建築を必ずしも必要としません。

ただし、「初めは自然物だけを拝し、後に本殿が造られた」と、全国の神社が同じ順序で変化したように説明することはできません。祭祀施設の成立時期と形態には、地域、祭神、祭祀を担った人々、政治的・社会的背景などによる違いがあったと考えられます。

3-2 本殿建築を確認できる時代

本殿の成立を考える際には、文献に記された殿舎、発掘調査で確認された建物跡、現存する建築を区別する必要があります。現存する本殿の多くは中世以降の建築、または近世・近代の再建です。その形式が古い系統を伝える場合でも、現在の建物を創祀当初の建物と同一視することはできません。

文化庁関係資料では、神明造・大社造を神社本殿建築の代表的な形式として挙げ、流造・春日造などが展開した建築史上の過程を説明しています。ただし、この説明も建築史上の整理であり、個々の神社の創祀年代を直接示すものではありません。

3-3 造替と再建

本殿は、老朽化、火災、風水害、戦乱などによって失われ、再建されることがあります。また、一定の期間ごとに社殿を造り替える遷宮・造替を伝える神社もあります。

そのため、神社の創建年代、本殿形式の成立時期、現在の本殿の建立年代は分けて記載しなければなりません。由緒に古代の創祀が伝えられていても、現存本殿が近世の建築であることは珍しくありません。

第4章 本殿内部の祭祀空間

4-1 内陣と外陣

本殿内部には、神座を設ける内陣と、その外側の外陣を設ける例があります。内陣は本殿のなかでも特に重要な場所です。ただし、すべての本殿が同じ間取りを持つわけではなく、内陣・外陣という名称を用いない神社もあります。

4-2 御扉・御帳・御簾

本殿には御扉が設けられ、神座の周囲に御帳や御簾などが用いられる場合があります。これらは、神座と人が奉仕する場所との間を区分する役割を持ちます。

御扉を開くこと自体が祭儀上の重要な所作となる神社もあります。開閉の時期や方法は各神社の祭式によるため、全国一律の作法として説明することはできません。

4-3 本殿内部が公開されない理由

本殿内部が通常公開されないのは、御神体を美術品のように秘匿しているからというだけではありません。祭神を奉斎する空間として、立入りや開扉が祭儀上制限されているためです。

文化財の特別公開などで本殿またはその一部を拝観できる場合も、公開範囲、撮影、参入できる場所について、神社や文化財管理者の案内に従います。

第5章 本殿・拝殿・幣殿などの違い

5-1 本殿と拝殿

本殿は祭神を奉斎する社殿です。拝殿は、参拝者や祭典奉仕者が祭神に拝礼するための社殿です。拝殿が本殿より大きい神社もあるため、建物の規模だけでは区別できません。

5-2 本殿と幣殿

幣殿は、幣帛を奉るなどの祭儀を行う空間です。本殿と拝殿の間に設けられることがありますが、独立した建物の場合、本殿または拝殿と接続する場合など、構成は一定していません。

5-3 祝詞殿・中殿・石の間・相の間

本殿と拝殿の間に、祝詞殿・中殿・石の間・相の間などと呼ばれる空間を設ける神社があります。これらの名称と役割は神社によって異なります。

本殿・拝殿・幣殿の主な違い

社殿 中心的な役割 通常の位置関係
本殿 祭神を奉斎し、神座を設ける 拝殿の後方など
拝殿 祭神に拝礼する 本殿の前方など
幣殿 幣帛を奉るなどの祭儀を行う 本殿と拝殿の間など

第6章 本殿建築を理解するための基礎

6-1 平入と妻入

切妻屋根の建物では、棟と平行する側を平、棟と直角に交わる側を妻と呼びます。平側に正面入口を設ける形式が平入、妻側に正面入口を設ける形式が妻入です。

平入・妻入は、神社の境内から見た単なる方角ではなく、屋根の棟と入口との関係を示します。正面から屋根を観察することが、形式を理解する第一歩となります。

6-2 切妻造と入母屋造

切妻造は、二つの屋根面が棟で合わさる基本的な屋根形式です。入母屋造は、上部を切妻、下部を寄棟とした屋根形式です。本殿には切妻造が多く見られますが、入母屋造などの本殿もあります。

6-3 身舎・庇・向拝

身舎(もや)は、建物の中心となる部分です。その周囲や一部に付加される部分を庇と呼びます。向拝は、社殿正面に張り出して設けられる参拝または昇降のための部分です。

向拝があることだけで建築形式を決定することはできません。屋根、入口、柱間、平面構成などを併せて確認します。

6-4 一間社・三間社の「間」

一間社・三間社などの「間」は、一般的には正面の柱間の数を示します。長さの単位としての一間と混同しないよう注意が必要です。

6-5 千木と鰹木

千木は屋根の棟の両端などから上方へ伸びる部材、鰹木は棟の上に並べられる部材です。神明造などを印象づける要素ですが、千木・鰹木の有無だけで本殿形式を判断することはできません。

第7章 代表的な本殿形式

7-1 神明造

神明造は、切妻造・平入を基本とし、伊勢の神宮の正殿に代表される形式です。棟持柱、千木、鰹木などを備え、直線的な構成を示します。

ただし、神明造には各地で違いがあり、伊勢の神宮の正殿と同じ形式であると単純に扱うことはできません。

7-2 大社造

大社造は、切妻造・妻入を基本とし、出雲大社本殿に代表されます。出雲大社本殿では入口が正面中央ではなく片側に寄り、内部の柱と神座の配置にも特徴があります。

7-3 住吉造

住吉造は、住吉大社本宮に代表される切妻造・妻入の形式です。内部は前後に分けられ、直線的な外観を示します。大社造・春日造と同じ妻入系統に分類される場合がありますが、平面や入口の位置は同一ではありません。

7-4 春日造

春日造は、切妻造・妻入の身舎正面に庇を設ける形式です。春日大社本殿に代表されます。一間社春日造を基本としますが、隅木を加えた隅木入春日造などもあります。

7-5 流造

流造は、切妻造・平入の正面側の屋根を長く延ばした形式です。賀茂別雷神社・賀茂御祖神社の本殿が代表例として挙げられ、各地の神社に広く見られます。

一間社流造、三間社流造など、正面の柱間数によっても区分されます。

7-6 八幡造

八幡造は、切妻造・平入の建物を前後に並べ、その間を接続した形式です。宇佐神宮本殿が代表例です。前方の建物と後方の建物がそれぞれ異なる役割を担い、二棟の間に相の間が形成されます。

7-7 日吉造

日吉造は、日吉大社の本殿に代表される形式です。正面から見ると入母屋造に近く見えますが、背面中央部の形状に特徴があります。聖帝造とも呼ばれます。

7-8 権現造

権現造は、本殿と拝殿を石の間または幣殿などの低い建物で結ぶ複合的な社殿構成です。日光東照宮や北野天満宮などが代表例として挙げられます。

権現造を本殿単体の平面形式として説明すると、社殿全体の関係が分かりにくくなります。本殿・中間部・拝殿が一体的に構成される点を確認する必要があります。

7-9 浅間造

浅間造は、富士山本宮浅間大社本殿に代表される重層の形式です。下層の建物の上に、流造の本殿部分を載せた特徴的な構成を持ちます。

代表的な本殿形式の比較

形式 基本的な特徴 代表例
神明造 切妻造・平入 伊勢の神宮
大社造 切妻造・妻入 出雲大社
住吉造 切妻造・妻入、内部を前後に区分 住吉大社
春日造 切妻造・妻入、正面に庇 春日大社
流造 切妻造・平入、正面の屋根を長く延ばす 賀茂別雷神社・賀茂御祖神社
八幡造 前後二棟を接続 宇佐神宮
日吉造 背面中央部に特徴を持つ 日吉大社
権現造 本殿と拝殿を中間の建物で結ぶ 日光東照宮・北野天満宮
浅間造 重層の建物上部に流造の本殿部分を設ける 富士山本宮浅間大社

第8章 本殿の形式と構成を伝える代表的な神社

8-1 伊勢の神宮―正宮と神明造

伊勢の神宮では、皇大神宮を内宮、豊受大神宮を外宮と通称し、それぞれの中心となる宮を正宮と呼びます。正宮の中心に位置する建物の正式な呼称として「正殿」が用いられます。

正殿は神明造を代表する建築ですが、現在の社殿は式年遷宮によって造替されてきました。神宮の歴史と現在の正殿の建築年代は、区別して理解する必要があります。

8-2 出雲大社―大社造と神座

出雲大社本殿は、大社造を代表する建築です。高床の本殿、正面片側に寄せた入口、内部の心御柱などに特徴があります。

出雲大社には古代の高大な本殿に関する社伝や図が伝わり、境内からは三本の材を束ねた鎌倉時代の巨大柱が確認されました。ただし、過去の本殿の正確な高さや姿については、社伝、図、発掘成果を区別して検討する必要があります。

8-3 賀茂別雷神社・賀茂御祖神社―流造

賀茂別雷神社と賀茂御祖神社の本殿は、流造を代表する建築として知られます。正面側の屋根を長く延ばし、参拝する側に深い軒を形成します。

8-4 春日大社―四棟の本殿

春日大社では、春日造の本殿四棟が並びます。一つの神社に本殿が一棟だけあるとは限らないことを示す代表例です。

8-5 住吉大社―四本宮と住吉造

住吉大社では、第一本宮から第四本宮までの本殿が配置されます。各本殿は住吉造で、社殿形式だけでなく、四本宮相互の配置も重要です。

8-6 宇佐神宮―三棟の八幡造

宇佐神宮上宮の本殿は、第一殿・第二殿・第三殿からなり、八幡造の代表例です。前殿と後殿を前後に並べる構成から、本殿内部の祭祀空間が単一とは限らないことが分かります。

8-7 富士山本宮浅間大社―浅間造

富士山本宮浅間大社本殿は、浅間造と呼ばれる重層の形式を伝えます。徳川家康による造営とされる現在の本殿は、浅間造を示す代表的な文化財です。

第9章 本殿を設けない神社と本殿の調べ方

9-1 本殿を設けないことの意味

すべての神社に本殿があるわけではありません。山などを神体として拝する神社では、祭神を奉斎するための独立した本殿を設けない場合があります。

本殿がないことは、設備の不足や神社の優劣を示すものではありません。また、本殿を設けない神社を一律に「原始的な祭祀をそのまま残す神社」と断定することも避ける必要があります。現在までに形成された社殿構成と祭祀の由緒を、個別に確認しなければなりません。

9-2 大神神社―三輪山を神体山として拝する神社

奈良県桜井市の大神神社は、本殿を設けず、三輪山を神体山として拝する神社として知られます。拝殿の奥に三ツ鳥居があり、その背後に位置する三輪山を拝します。

本殿がないことを単なる建物の省略と考えるのではなく、三輪山と拝殿、禁足地を含む祭祀空間全体から理解する必要があります。

三輪山を神体山として拝する大神神社については、次の記事で詳しく紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/oh meiwa-shrine/

三輪山 NCCを御神体として拝する大神神社
大神神社(桜井市三輪)〈三輪山を〈御神体〉とする大和國一之宮〉

大神神社(おおみわじんじゃ)は 『記紀神話』に創建に関わる伝承が記されており 『延喜式』には名神大社と所載される 大和国一之宮です 古来から本殿は設けず 拝殿の奥にある三ッ鳥居を通し 三輪山〈御神体〉に祈りを捧げる原初の神祀りで 我が国最古の神社と呼ばれています 神社の社殿が成立する以前の祭祀の姿を今に伝えています 

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9-3 金鑽神社―御室山を拝する祭祀形態

埼玉県児玉郡神川町の金鑽神社は、御室山を神体山として拝し、本殿を設けない神社として知られます。拝殿の背後に山が位置する構成は大神神社と共通して見えますが、それぞれの祭神、由緒、祭祀空間は同一ではありません。

「本殿がない」という一点だけで二社を同じ祭祀形態と断定せず、神社ごとの説明を確認する必要があります。

御室山を拝する金鑽神社については、次の記事で詳しく紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/kanasana-shrine/

御室山を神体山として拝する金鑽神社
金鑽神社(神川町二ノ宮)〈武藏國二之宮〉

金鑽神社(かなさなじんじゃ)は 背後の山全体〈禁足地 御室ケ獄〉を御神体として とくに本殿はなく 自然の山を祀る太古の信仰形態を残しています 社伝には景行天皇の御代 (西曆100年頃 )日本武尊(やまとたけるのみこと)が火打石・火鑽金を鎮め祀ったことを創始とし 延喜式神名帳には武蔵國 兒玉郡 金佐奈神社(名神大)(かなさなの かみのやしろ)と所載の古社です

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9-4 諏訪大社上社本宮―独自の社殿構成

長野県諏訪市の諏訪大社上社本宮も、一般に本殿を設けない神社として説明されます。境内には拝殿、幣拝殿、左右片拝殿、四脚門、宝殿などがあり、一般的な「本殿・幣殿・拝殿」という直線的構成だけでは説明できません。

諏訪大社上社本宮については、神体山に関する説明、宝殿の役割、社殿配置の変遷を区別して確認する必要があります。

諏訪大社上社本宮の境内と由緒については、次の記事で詳しく紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/suwataisha-kaminoyashiro-honmiya/

本殿を設けない独自の社殿構成を伝える諏訪大社上社本宮
諏訪大社 上社 本宮(諏訪市)

諏訪大社 上社 本宮は 全国に1万以上の御分社をもつ諏訪神社の総本社です 諏訪湖を挟んで 南に上社「本宮・前宮」北に下社「秋宮・春宮」があり この4宮を諏訪大社と呼びます 上社本宮は諏訪湖の南東に佇む守屋山の麓に位置し 参道は 北と東から2つ参道がありますが 正式な参拝路は 前宮から続く東参道とされています

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9-5 本殿を設けない三社の違い

本殿を設けない代表的な神社の比較

神社 本殿に代わる中心的な祭祀対象・構成 確認上の注意
大神神社 三輪山を神体山として拝する 拝殿・三ツ鳥居・禁足地との関係を確認する
金鑽神社 御室山を神体山として拝する 大神神社と同一の由緒・祭祀とは扱わない
諏訪大社上社本宮 拝殿・宝殿などによる独自の社殿構成 神体山に関する説明と社殿の役割を個別に確認する

9-6 本殿の建立年代を調べる

本殿を調べるときは、神社の創祀年代と現在の建物の建立年代を分けます。文化財指定名称、文化財解説、棟札、修理工事報告書、神社明細帳、社記、造営記録などが手掛かりとなります。

棟札には、造営年、修理年、願主、工匠などが記される場合があります。ただし、棟札が後世の写しである可能性や、現在の建物と対応しているかについても確認が必要です。

9-7 文化財として本殿を見る

文化財となっている本殿では、建立年代だけでなく、建築形式、屋根、軸部、組物、彫刻、彩色、修理履歴、棟札などが評価の対象となります。

現地では、正面だけでなく、棟の向き、側面と背面、向拝、屋根材、千木・鰹木、拝殿との接続、瑞垣との関係を確認すると理解が深まります。ただし、立入禁止区域へ入ったり、建物へ触れたりせず、撮影についても神社の案内に従います。

第10章 よくある質問(FAQ)

Q1 本殿と拝殿は何が違うのですか

本殿は祭神を奉斎し、神座を設ける社殿です。拝殿は参拝者や祭典奉仕者が祭神に拝礼する社殿です。両者は大きさではなく、祭祀上の役割によって区別します。

Q2 本殿には必ず御神体がありますか

多くの神社では本殿内に御神体が奉安されますが、御神体・神座・祭神の説明方法は神社によって異なります。また、山などを神体として拝し、本殿を設けない神社もあります。

Q3 本殿の中を見ることはできますか

通常、本殿内部は公開されません。文化財の特別公開などが行われる場合は、公開範囲と撮影の可否について神社や管理者の案内に従います。

Q4 本殿は境内で最も大きな建物ですか

必ずしも最大とは限りません。祭典や祈祷に用いる拝殿の方が大きい神社もあります。

Q5 本殿がない神社もあるのですか

あります。大神神社や金鑽神社のように、山を神体山として拝し、独立した本殿を設けない神社があります。

Q6 本殿形式は屋根だけで判断できますか

屋根だけでは判断できません。平入・妻入、柱間、身舎と庇、向拝、内部平面などを併せて確認します。

Q7 正殿と本殿は同じですか

本殿に相当する中心殿舎を正殿と呼ぶ場合がありますが、すべての神社で完全な同義語とは限りません。伊勢の神宮などでは正式な名称に従って記載します。

Q8 神社の創建年代と本殿の建立年代は同じですか

同じとは限りません。神社の創祀が古代に伝えられていても、現在の本殿が中世・近世・近代に再建された建物である場合があります。

第11章 Shrine Heritager 編集部考察

本殿は神社の中心的な社殿ですが、本殿の外観だけを見ても、その神社の祭祀を十分に理解することはできません。神座、御神体、拝殿・幣殿との位置関係、祭神、造替・遷座の記録を併せて確認する必要があります。

また、本殿を設けない神社の存在は、神社祭祀が一つの建築形式だけで成り立っていないことを示しています。本殿の有無や大きさによって神社を評価するのではなく、神をどこに、どのように奉斎しているのかを個別に読み取ることが大切です。

第12章 関連項目(See also)・内部リンク

本殿に関連する用語

項目 URL 本殿との関係
神体 https://shrineheritager.com/shintai/ 神霊の依りつく対象とされるもの
神奈備 https://shrineheritager.com/kannabi/ 神が鎮まる山や森と本殿を設けない祭祀を考える関連概念
相殿 https://shrineheritager.com/aidono/ 同一社殿に複数の神を奉斎する場合に関係する用語
摂社 https://shrineheritager.com/sessha/ 本社と特に深い関係を持つ神社とその本殿
末社 https://shrineheritager.com/massha/ 本社に付属する神社とその本殿
別宮 https://shrineheritager.com/betsugu/ 本宮・正宮と特に深い関係を持つ宮
本宮 https://shrineheritager.com/hongu/ 中心となる宮を示し、本殿という建物とは区別される用語
元宮 https://shrineheritager.com/motomiya/ 旧鎮座地や起源に関係する宮

第13章 参考文献

13-1 文化財・公的資料

  • 文化庁『国指定文化財等データベース』各建造物項目
  • 文化庁・文化遺産オンライン「神社本殿建築の形式」「神社本殿建築の代表的様式」
  • 奈良県・埼玉県・長野県ほか、各自治体の文化財指定資料
  • 各国宝・重要文化財建造物修理工事報告書

13-2 基礎文献・専門研究

  • 太田博太郎『日本建築史序説』彰国社
  • 稲垣栄三『神社と霊廟』小学館
  • 日本建築学会編『日本建築史図集』彰国社
  • 神社本庁編『神社有職故実』神社本庁
  • 國學院大學日本文化研究所編『神道事典』弘文堂

13-3 神社公式資料

  • 神宮司庁「神宮について」「正宮」
  • 出雲大社「境内案内・御本殿」
  • 賀茂別雷神社・賀茂御祖神社公式案内
  • 春日大社「御本殿」
  • 住吉大社「国宝本殿」
  • 宇佐神宮「国宝本殿」
  • 富士山本宮浅間大社「境内案内」
  • 大神神社「三輪山と拝殿」
  • 金鑽神社・諏訪大社の公式由緒および境内案内

第14章 External Links(外部リンク)

神社本庁「境内について」

御本殿と拝殿の役割など、神社境内の基本的な構成を紹介しています。

URL: https://www.jinjahoncho.or.jp/omairi/keidai/

神社本庁「社殿について」

神明造・大社造・住吉造・春日造・権現造・浅間造など、社殿形式の概要を紹介しています。

URL: https://www.jinjahoncho.or.jp/omairi/shaden/

文化庁・文化遺産オンライン「神社本殿建築の形式」

神社本殿建築の成立と、神明造・大社造・流造・春日造などの形式を建築史の観点から説明しています。

URL: https://bunka.nii.ac.jp/suisensyo/kyoto/APPENDIX-5/appendix5-1-j.html

文化庁・文化遺産オンライン「神社本殿建築の代表的様式」

神明造・大社造・流造・春日造の立面図を比較できます。

URL: https://bunka.nii.ac.jp/suisensyo/kyoto/APPENDIX-5/appendix5-2-j.html

文化庁「国指定文化財等データベース」

国宝・重要文化財に指定された本殿の名称、所在地、年代、構造形式などを確認するための基礎資料です。

URL: https://kunishitei.bunka.go.jp/

第15章 更新履歴(Revision History)

本記事の更新履歴

更新日 内容
Edition 1 Official Master 2026年9月6日 既存記事の構成に依存せず、定義、名称、成立、内部空間、社殿の違い、建築形式、代表例、本殿を設けない神社、文化財としての調べ方を再構成しました。
  • B!

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