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四魂(しこん)とは?意味・四つの御魂・日本書紀・神社を解説

SHD-0015 四魂(しこん)とは?意味・四つの御魂・日本書紀・神社を解説 Edition 1 Master Rev.1

四魂(しこん)とは、荒魂・和魂・幸魂・奇魂を、神の御魂が示す四つの働きとして捉える後世の整理です。本記事では『日本書紀』『古事記』『出雲国造神賀詞』の記述、神社祭祀との関係、四魂説と一霊四魂説の成立時期や目的の違いを、史料に即して解説します。

四魂の基本情報

用語 四魂
読み方 しこん
別表記 四御魂、四つの御魂
英語表記 Four aspects of the divine spirit(説明的英訳)
意味 荒魂・和魂・幸魂・奇魂を、御魂の四つの働きとして説明する考え方
分類 神道用語/御魂観/神道思想史
対概念 特になし
関連概念 御魂、荒御魂、和御魂、幸御魂、奇御魂、一霊四魂、鎮魂、分霊

第1章 四魂とは

1-1 荒魂・和魂・幸魂・奇魂という四つの御魂

四魂(しこん)は、荒魂(あらみたま)・和魂(にぎみたま)・幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)を、四つの御魂の働きとして説明するときに用いられる言葉です。一般には、一柱の神が力強く働く面、穏やかに守る面、幸いをもたらす面、霊妙な力を現す面を表すと説明されます。

ただし、四魂を四柱の独立した神とみなしたり、一つの魂が物理的に四分割されたものと捉えたりするのは適切ではありません。古代の神話や祭祀では、神の御魂が本体と関係を保ちながら、別の神格のように現れ、別の場所に鎮まることがあります。現代的な「一人に一つの人格」という考え方だけでは捉えにくい表現です。

1-2 古代史料に完成した「四魂一覧」はない

四魂を理解するうえで最も重要なのは、古代史料と後世の体系を区別することです。『日本書紀』には荒魂・和魂・幸魂・奇魂の四語が見えますが、同じ場面に四つを並べ、「神にはこの四魂がある」と定義した箇所はありません。荒魂と和魂は神功皇后紀に、幸魂と奇魂は神代巻の大己貴神の国作りに、それぞれ一組として現れます。

したがって、四魂は古代の用語を基礎としながらも、四者を一つの体系として理解する形は後世に整えられたものです。さらに、一霊が四魂を統御すると説く「一霊四魂」は、幕末以後に体系化された特定の霊魂論であり、記紀本文そのものとは同一ではありません。

1-3 四魂を理解する三つの層

本記事では、第一に記紀や祝詞などの古代史料に記された御魂、第二に中世・近世の注釈や神道説で整理された四魂、第三に幕末・近代に展開した一霊四魂説を分けて扱います。この区別によって、神社祭祀上の荒御魂奉斎を、直ちに近代の人格論や修養論へ置き換えることを避けます。

第2章 四つの御魂の名称と意味

2-1 荒魂―力強く顕著に働く御魂

荒魂は、神威が強く活動的に現れる働きを表します。「荒」は単なる怒りや悪を意味するのではありません。『日本書紀』では軍船の先鋒となって進路を導き、『古事記』では墨江大神の荒御魂が国守の神として鎮祭されます。困難を切り開き、平常を超えて働く力として理解できます。

2-2 和魂―穏やかに守り鎮める御魂

和魂は、神威が穏やかに働き、生命や秩序を守り、物事を調える面を表します。神功皇后紀では王の身に従って寿命を守り、王船を鎮める働きが語られます。「和」は弱さや消極性ではなく、強い神威を安定と守護へ向ける働きです。

2-3 幸魂―生成と幸いをもたらす御魂

幸魂の「さき」は、幸い、栄え、物事が開けていく働きと関係づけて説明されます。『日本書紀』では奇魂と分けて定義されず、「幸魂奇魂」と一続きに現れ、大己貴神の国作りを完成へ導きます。現代の説明では繁栄・豊穣・育成などと結びつけられますが、個別の御利益を一律に確定する言葉ではありません。

2-4 奇魂―霊妙な力によって事を成す御魂

奇魂の「くし」は、霊妙、不可思議、通常の理解を超えた力を表す語とされます。幸魂とともに海を照らして来臨し、国作りを成就させる神として語られるため、知恵や霊力によって物事を完成させる働きと説明されます。ただし「奇魂=知性」という一語の対応は古典本文の定義ではありません。

荒魂・和魂・幸魂・奇魂の基本的な違い

御魂 読み 中心的な働き 古典での現れ方
荒魂 あらみたま 力強く顕著に働く 軍船の先鋒となって導く
和魂 にぎみたま 穏やかに守り鎮める 王身・寿命を守り、王船を鎮める
幸魂 さきみたま 生成・繁栄・幸い 奇魂とともに国作りを成就させる
奇魂 くしみたま 霊妙な力で事を成す 海を照らして現れ、三諸山に鎮座する

第3章 古典史料に記された御魂

3-1 『日本書紀』神功皇后紀の荒魂・和魂

『日本書紀』巻九、神功皇后摂政前紀には、渡海に先立つ神託として、和魂が王の身に従って寿命を守り、荒魂が先鋒となって軍船を導くと記されます。

和魂服王身而守壽命、荒魂爲先鋒而導師船。

読み下しは「和魂は王の身に服ひて寿命を守り、荒魂は先鋒として師船を導かむ」です。ここでは、同じ神の御魂が守護と先導という異なる役割を担います。続く記事では、荒魂を軍の先鋒とし、和魂を請うて王船の鎮めとする趣旨が語られます。

3-2 『日本書紀』神代巻の幸魂・奇魂

『日本書紀』巻一、神代上第八段一書第六では、少彦名命が去った後、大己貴神が一人で国作りを続けようとします。そのとき海を照らして神が現れ、自らを大己貴神の幸魂・奇魂であると告げます。

吾是汝之幸魂奇魂也。

神は日本国の三諸山に住むことを望み、そこに宮を営んで鎮座させた神が大三輪の神であると記されます。幸魂・奇魂は大己貴神自身の御魂でありながら、海の彼方から来る相手のように語りかけ、別の場所に鎮まります。これは古代の御魂観を考えるうえで重要な表現です。

3-3 『古事記』の御諸山鎮座譚との違い

『古事記』にも、少名毘古那神が去った後、海を光らせて来る神が大国主神の前に現れ、自らを倭の青垣の東の山に祀るよう求める物語があります。しかし、『古事記』本文は来臨神を「幸魂・奇魂」とは呼びません。物語の骨格が共通していても、御魂に関する表現は『日本書紀』と同じではありません。

3-4 『古事記』神功皇后段の荒御魂

『古事記』神功皇后段には、渡海後、墨江大神の荒御魂を国守の神として鎮祭したとする記述があります。荒御魂を別の場所に祀る観念は確認できますが、『日本書紀』のように荒魂と和魂の役割を対にして詳しく説明するものではありません。

3-5 『出雲国造神賀詞』にみえる和魂

『延喜式』祝詞式に収められた『出雲国造神賀詞』では、大穴持命が自らの和魂を八咫鏡に取り託け、倭大物主櫛甕玉命と称えて大御和の神奈備に鎮めたという趣旨が奏上されます。『日本書紀』が大三輪の神を幸魂・奇魂とするのに対し、神賀詞では和魂として語られます。同じ神格関係をめぐる古代史料の説明が一様ではないことを示します。

第4章 四魂説の成立と展開

4-1 古代史料にあるのは二組の御魂

古代史料から直接確認できるのは、荒魂・和魂の対と、幸魂・奇魂の対です。四語が存在することと、四魂という完成した体系が成立していることは同じではありません。史料本文には、四つを一括する総称、四者の序列、相互関係、人格との対応などは示されていません。

4-2 中世・近世の注釈と神道説

中世以降、『日本書紀』は神道家や注釈者によって繰り返し読み直されました。荒魂と和魂を神威の根本的な二面とみる説明、幸魂・奇魂を和魂の働きに含める説明、四つを並べて捉える説明などが生まれます。これらは古典の語を受け継ぎながら、各時代の思想的課題に応じて組み立てられた解釈です。

4-3 近世国学における整理

近世の国学者は記紀や祝詞の語義を検討し、御魂の関係を論じました。本居宣長は、幸魂・奇魂を和魂の名または働きとして理解する方向を示します。この理解では、荒魂・和魂が根本の対となり、幸魂・奇魂は和魂の働きを詳しく表すものとなります。四者を常に並列する近代的な図式とは異なります。

4-4 幕末・近代の一霊四魂説

幕末から近代には、本田親徳の霊学などで、一霊が荒魂・和魂・幸魂・奇魂を統御するという一霊四魂説が体系化されました。四魂は神だけでなく人の心や行為を説明する枠組みに用いられ、勇・親・愛・智という徳目との対応も広まります。

この体系は古代語を用いていますが、成立時期も目的も記紀の神話叙述とは異なります。古代の神社祭祀を一霊四魂説の実践とみなしたり、勇・親・愛・智を『日本書紀』の逐語的な定義として示したりすることはできません。

第5章 神社祭祀における御魂

5-1 同じ神の御魂を別宮に祀る

神社祭祀では、一柱の神の荒御魂を本宮とは別の宮に奉斎する例があります。これは神を単純に分割する行為ではなく、特定の働きを示す御魂を丁重に祀る形と理解されます。また、荒御魂を別宮に祀るからといって、本宮の祭神名が必ず和御魂と明記されるわけではありません。

5-2 伊勢神宮の荒御魂奉斎

伊勢神宮では、皇大神宮の別宮である荒祭宮に天照大御神荒御魂、豊受大神宮の別宮である多賀宮に豊受大御神荒御魂が祀られます。月讀宮と並ぶ月讀荒御魂宮には月讀尊荒御魂が祀られます。同じ神の格別に顕著な神威を別宮に奉斎する代表的な祭祀構造です。

5-3 幸魂・奇魂と三輪山祭祀

幸魂・奇魂と神社祭祀の関係を考える中心的な例が、三輪山に鎮まる大物主大神です。『日本書紀』では大己貴神の幸魂・奇魂が三諸山に鎮座して大三輪の神となります。一方、『古事記』や『出雲国造神賀詞』では関係の表現が異なるため、複数の史料を一つの物語へ均してしまわない注意が必要です。

5-4 四魂すべてを別々に祀るとは限らない

四魂という語から、すべての神社が四つの御魂を別々に祀ると思われることがあります。しかし、実際の祭神構成は神社ごとの由緒と祭祀に基づきます。荒御魂だけを別宮に祀る例、幸御魂を祭神名に掲げる例などはありますが、四魂が固定された一組として必ず奉斎されるわけではありません。

第6章 四魂の構造と考え方

6-1 荒魂・和魂を根本の対とする見方

荒魂と和魂は、力強く外へ働く神威と、穏やかに守り鎮める神威という対で理解しやすい組み合わせです。神功皇后紀では、先鋒と王身の守護という役割の違いが明確です。ただし、両者を破壊と創造、悪と善のような固定的二元論へ置き換えることはできません。

6-2 幸魂・奇魂を一続きの働きとする見方

『日本書紀』では「幸魂奇魂」と続けて記され、個別の定義はありません。国作りを完成させ、三諸山に鎮まる一連の神威を、幸いを開く働きと霊妙に成し遂げる働きから説明したものと考えられます。二者を完全に切り離した性格分類にするより、連携した働きとして読むことが本文に適しています。

6-3 四者を並列する見方

後世の四魂説、とくに一霊四魂説では、荒魂・和魂・幸魂・奇魂を並列し、それぞれに役割や徳目を割り当てます。この整理は四者の違いを理解しやすくしますが、古代史料にそのまま遡るものではありません。記事や図版では「後世の体系的整理」と明示する必要があります。

第7章 四魂と関連概念の違い

四魂・一霊四魂・分霊・鎮魂・神体の違い

概念 意味 四魂との違い
御魂 神霊を敬っていう語 四魂を含む、より広い概念です
一霊四魂 一霊が四魂を統御するとする霊魂論 幕末以後に体系化された特定の思想です
分霊 神の御神霊を新たな場所に奉斎すること 祭祀上の手続き・関係を表します
鎮魂 魂を鎮め、安定させる儀礼・観念 御魂の働きの分類ではありません
神体 神霊の鎮まる対象として拝されるもの 御魂の働きではなく祭祀対象のあり方です

第8章 四魂に関係する代表的な神社

8-1 大神神社―幸魂・奇魂と三諸山

奈良県桜井市の大神神社は、大物主大神を祀り、三輪山を御神体として拝する神社です。『日本書紀』の幸魂・奇魂が三諸山に鎮座した物語と深く結びつき、古代の御魂観を具体的な祭祀の場から考えるうえで重要です。

三輪山と大物主大神の祭祀については、次の記事で詳しく紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/ohomiwa-shrine/

幸魂・奇魂と三輪山祭祀を伝える大神神社
大神神社(桜井市三輪)〈三輪山を〈御神体〉とする大和國一之宮〉

大神神社(おおみわじんじゃ)は 『記紀神話』に創建に関わる伝承が記されており 『延喜式』には名神大社と所載される 大和国一之宮です 古来から本殿は設けず 拝殿の奥にある三ッ鳥居を通し 三輪山〈御神体〉に祈りを捧げる原初の神祀りで 我が国最古の神社と呼ばれています 神社の社殿が成立する以前の祭祀の姿を今に伝えています 

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8-2 荒祭宮―天照大御神荒御魂

荒祭宮は皇大神宮の第一別宮で、天照大御神荒御魂を祀ります。荒御魂が悪い魂ではなく、格別に顕著な神威として丁重に奉斎されることを示す代表例です。

天照大御神荒御魂を祀る別宮については、次の記事で詳しく紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/aramatsuri-no-miya/

天照大御神荒御魂を祀る荒祭宮
荒祭宮〈皇大神宮(内宮)別宮〉

荒祭宮(あらまつりのみや)は 『皇太神宮儀式帳〈延暦23年(804)〉』に「荒祭宮一院 大神宮の北にあり 相去ること二十四丈 大神宮の荒御魂宮と称す」とあり『延喜太神宮式〈延長5年(927)〉』に「荒祭宮一座 大神の荒魂」とも見える古社です 天照大御神の荒御魂を祀り 内宮に所属する十所の別宮のうち 第一に位しています

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8-3 月讀荒御魂宮―月讀尊荒御魂

月讀荒御魂宮は、皇大神宮別宮の月讀宮と並んで鎮座し、月讀尊荒御魂を祀ります。同じ神の御魂を隣接する宮で丁重に奉斎する伊勢の祭祀構造を伝えます。

月讀宮と月讀荒御魂宮の構成については、次の記事で確認できます。

URL: https://shrineheritager.com/tsukiyominomiya/

月讀尊と荒御魂を祀る月讀宮・月讀荒御魂宮
月讀宮・月讀荒御魂宮・伊佐奈岐宮・伊佐奈彌宮〈皇大神宮(内宮)別宮〉〉

月讀宮・月讀荒御魂宮・伊佐奈岐宮・伊佐奈彌宮は 各々が皇大神宮(内宮)の別宮で 明治6年(1873)現在の四つ宮並列した形で鎮座しました 『皇太神宮儀式帳(804年)』には「月讀宮一院 正殿四区」と一宮に四殿と記し 『延喜式〈927年〉』には「伊佐奈岐宮・伊佐奈彌社が瑞垣を巡らしたー院」「「月讀宮・月讀尊荒御魂社で一院」と二宮であったと記されています

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8-4 居森社―須佐之男命幸御魂

愛知県津島市の津島神社境内摂社・居森社は、須佐之男命幸御魂を祭神として伝えます。幸御魂を祭神名に明示する例として、御魂の働きが個別神社の由緒に結びつくあり方を示します。

居森社の由緒と鎮座地については、次の記事で詳しく紹介しています。

URL: https://shrineheritager.com/imori-sha/

須佐之男命幸御魂を祀る居森社
居森社(津島市神明〈津島神社 境内摂社〉)〈『延喜式』國玉神社の旧跡〉

居森社(いもりしゃ)は 津島神社の南門大鳥居をくぐると鎮座します 素戔嗚大神が この地に初めて来臨され 神船を高津の湊の森に寄せて奉られた地とされ 蘇民将来の裔孫と云う老女が 霊鳩の詫によって森の中に居え奉った事により「居森社」と云われます 彌五郎殿社〈式内社 國玉神社〉の舊跡とされています

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第9章 現代における四魂の理解と注意点

9-1 性格分類として固定しない

現代では、四魂を人の性格や能力に当てはめ、荒魂を行動力、和魂を親和性、幸魂を愛情、奇魂を知性として説明することがあります。自己理解の比喩として使うことはできますが、これは後世の一霊四魂説に基づく応用です。古代の神社祭祀や記紀神話を、そのまま心理テストに置き換えることはできません。

9-2 「古神道以来の完成教義」と断定しない

荒魂・和魂・幸魂・奇魂という語が古代史料にあることから、現在知られる一霊四魂の体系も古代から変わらず伝わったと説明される場合があります。しかし、史料上確認できるのは別々の場面に現れる二組の御魂です。古代語の存在と、後世の体系の成立を区別する必要があります。

9-3 創作作品に登場する「四魂」との違い

「四魂」は漫画や物語に登場する「四魂の玉」を通じても知られていますが、創作上の設定と神道史上の御魂観は同一ではありません。本記事が扱うのは、記紀・祝詞・神社祭祀と、そこから展開した神道思想上の四魂です。

第10章 よくある質問(FAQ)

Q1 四魂とは何ですか?

荒魂・和魂・幸魂・奇魂を、神の御魂が示す四つの働きとして説明する考え方です。ただし、四者を一つの体系にまとめる形は後世の整理です。

Q2 四魂は何と読みますか?

「しこん」と読みます。四つの御魂は、あらみたま・にぎみたま・さきみたま・くしみたまです。

Q3 四魂は『古事記』に書かれていますか?

四つを一組とする説明はありません。荒御魂の語や御諸山鎮座譚はありますが、来臨神を幸魂・奇魂と明記するのは『日本書紀』です。

Q4 四魂は『日本書紀』に書かれていますか?

四つの語は見えますが、荒魂・和魂と幸魂・奇魂が別の場面に二組として現れます。「四魂」という完成した一覧は示されません。

Q5 荒魂は悪い魂ですか?

悪霊という意味ではありません。力強く顕著に働き、困難を切り開き、先導する神威として語られます。

Q6 幸魂と奇魂はどのような関係ですか?

『日本書紀』では「幸魂奇魂」と一続きに現れ、大己貴神の国作りを完成させて三諸山に鎮座する御魂として語られます。

Q7 四魂と一霊四魂は同じですか?

同義ではありません。一霊四魂は、一霊が四魂を統御するとする幕末以後に体系化された霊魂論です。

Q8 勇・親・愛・智は古代の定義ですか?

古代史料の直接的な定義ではありません。近代の一霊四魂説で広まった教学上の配当です。

Q9 四魂すべてを別々に祀る神社はありますか?

四魂を掲げる由緒はありますが、多くの神社が四つを必ず別々に祀るわけではありません。祭神構成は各神社の由緒によります。

Q10 四魂は人間にもあると考えられていますか?

一霊四魂説では人の霊魂や心の働きとして説明されます。ただし、それを古代の神社祭祀と同一視することはできません。

第11章 Shrine Heritager編集部考察

11-1 二組の御魂から四魂へ

四魂という考え方の特徴は、古代史料の中で別の物語に現れる二組の御魂が、後世の解釈によって一つの体系へ組み直された点にあります。これは単なる誤読ではなく、古典を新しい問題意識から読み直した神道思想史の一過程です。ただし、後世の体系を古代へ遡らせて説明すれば、史料が語る固有の場面は見えにくくなります。

11-2 御魂の多面性を祭祀から捉える

荒祭宮や月讀荒御魂宮の祭祀が示すのは、神を性格の一覧に当てはめることではなく、同じ神の格別な働きを別宮に迎え、丁重に祀るという実践です。四魂を理解するときは、抽象的な図式だけでなく、どの神の、どの御魂が、どの場所で、どのような由緒によって祀られているかを見る必要があります。

11-3 四魂は神の「分割」ではない

四魂の意義は、一柱の神を機械的に四分割することではありません。古代の御魂観では、神の働きが本体との関係を失わずに、独立した神格のように現れることがあります。四魂は、神威が守護し、切り開き、幸いを開き、霊妙に成就させるという多面性を理解するための言葉として読むことができます。

第12章 関連項目(See also)・内部リンク

四魂とあわせて読みたい関連記事

関連項目 URL 関係
荒御魂 https://shrineheritager.com/aramitama/ 力強く顕著に働く御魂を詳しく解説します。
和御魂 https://shrineheritager.com/nigimitama/ 穏やかに守り鎮める御魂を詳しく解説します。
幸御魂 https://shrineheritager.com/sakimitama/ 幸魂・奇魂と国作りの関係を解説します。
奇御魂 https://shrineheritager.com/kushimitama/ 霊妙な働きと三輪信仰を解説します。
分霊 https://shrineheritager.com/bunrei/ 御魂の働きと、神霊を別の場所に奉斎することの違いを確認できます。

第13章 参考文献

13-1 一次史料

  • 『日本書紀』巻一「神代上」第八段一書第六
  • 『日本書紀』巻九「神功皇后摂政前紀」仲哀天皇九年九月条
  • 『古事記』上巻「少名毘古那神との国作り」
  • 『古事記』中巻「神功皇后」
  • 『延喜式』巻八「祝詞式」所収『出雲国造神賀詞』
  • 『皇太神宮儀式帳』

13-2 校注書・研究文献

  • 坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋校注『日本書紀』日本古典文学大系、岩波書店。
  • 小島憲之・直木孝次郎・西宮一民ほか校注・訳『日本書紀』新編日本古典文学全集、小学館。
  • 倉野憲司校注『古事記』岩波文庫、岩波書店。
  • 神道文化会編『神道要語集』神社新報社。
  • 山本寿夫「荒・和幸・奇の四魂」『岡山県立短期大学研究紀要』第7号、1963年。
  • 並木英子『本田霊学―その思想の創造と行法の受容についての研究』国際基督教大学博士論文、2021年。

第14章 External Links(外部リンク)

国立国会図書館デジタルコレクション

近代以前の刊本、注釈書、神道関係資料の原本画像を確認するための公開データベースです。

URL: https://dl.ndl.go.jp/

国文学研究資料館「国書データベース」

古典籍の書誌、所蔵情報、公開画像を確認するために参照します。

URL: https://kokusho.nijl.ac.jp/

國學院大學デジタル・ミュージアム

神道用語と古代神社史料を確認するための大学研究機関によるデータベースです。

URL: https://d-museum.kokugakuin.ac.jp/

國學院大學「古典文化学」事業

『古事記』本文、神名、神話の異伝を確認するために参照します。

URL: https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/

神宮公式サイト

荒祭宮、多賀宮、月讀荒御魂宮の祭神と別宮としての位置づけを確認するために参照します。

URL: https://www.isejingu.or.jp/

大神神社公式サイト

大物主大神、三輪山、大神神社の祭祀と由緒を確認するために参照します。

URL: https://oomiwa.or.jp/

第15章 更新履歴(Revision History)

四魂の記事更新履歴

日付 更新内容
Edition 1 Official Master 2026年8月14日 Version 5.3準拠。古代史料の二組の御魂、後世の四魂説、幕末以後の一霊四魂説を区別し、章構成・外部リンク・内部リンク・投稿IDを全面再監査しました。

 

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