大洗磯前神社（大洗町磯浜町）〈『延喜式』大洗礒前藥師菩薩明神社〔名神大〕〉

大洗磯前神社（おおあらいいそさきじんじゃ）は　『文徳天皇実録』斉衡三年(856)十二月二十九日の條に常陸国上言として　創建の由来が記され　天安元年（857）の條には官社に預っています　延喜式内社　常陸國 鹿嶋郡 大洗礒前藥師菩薩明神社〔名神大〕（おほあらひ いそさきの やくしほさつの あけのかみのやしろ）です

1.ご紹介（Introduction）

　この神社の正式名称や呼ばれ方　現在の住所と地図　祀られている神様や神社の歴史について　ご紹介します

【神社名(Shrine name）】

大洗磯前神社（Oharai isosaki shrine）

【通称名(Common name)】

・大洗様（おおあらいさま）

【鎮座地　(Location)　】

茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6890

【地　図 (Google Map)】

【御祭神　(God's name to pray)】

《主》大己貴命（おほなむちのみこと）
　　　少彦名命（すくなひこなのみこと）

【御神徳　(God's great power)】（ご利益）

・福徳円満　厄難消除　家内安全　商売繁盛　交通安全等の大神　
・酒造の大神
・病難に苦しむ人々を治癒し給う医療厚生の大神

【格　式　(Rules of dignity) 】

・　国史記載社〈六国史（『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』）に記載されている神社〉

・『延喜式神名帳（engishiki jimmeicho ）927 AD.』所載社〔名神大社〕

【創　建　(Beginning of history)】

大洗磯前神社（おおあらいいそさきじんじゃ）

　延喜式内大社
　国幣中社

鎮座地　茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6890番地

御祭神

　大己貴命（おおなむちのみこと）（大国主神）
　少彦名命（すくなひこなのみこと）

祭礼

　例祭（八朔祭）　　　 8月25日
　太々神楽祭　　　　　 4月第2日曜日
　秋季神事祭（有賀祭）11月11日

御神徳

　大己貴命（大国主神）少彦名命は『古事記』『日本書紀』をはじめ古典に国土開発 殖産興業の大神　また医薬の祖神として　その活躍が記され　現代に於いては福徳円満　厄難消除　家内安全　商売繁盛　交通安全等の大神　更には酒造の大神　病難に苦しむ人々を治癒し給う医療厚生の大神としてあらたかな御神徳に古来より人々の深く厚い信仰がよせられ　当社に心魂込めて祈願をこむれば必ずお聞き届け下さると云われております

御由緒

　当神社の御創立は古く 六国史の一つ『文徳天皇実録』斉衡三年(856)十二月二十九日に常陸国上言が記されており　それによると鹿島郡大洗磯前に神が新しく降りられた　初め郡民で海水を煮て塩をつくる者が　夜半に海を望むと天が光り輝いているのが見えた　明くる日　高さ各一尺ほどの二つの怪石が海辺にあった　その翌日　さらに二十余の小石が　二つの怪石の左右に侍座するようにならび　彩色はつねにあらず形は沙門に似ているが　ただ耳や口はない　時に神が人に依りて云うに「我は大奈母知（おおなもち）少比古奈命（すくなひこなのみこと）なり　昔　此の国を造り訖り　東海に去ったが　今民を済わん為に　更にまた此の地に帰って来た」という　御神託が下された事が記載されております　即ち当神社は御創立の当初から東国の総守護神として　大神様御自ら此の大洗の地を選び　御鎮座になったのであります

　翌 天安元年八月七日に官社に列し　十月十五日には大洗磯前薬師菩薩名神の号を賜り　延喜式神名帳にも大洗磯前薬師菩薩神社と記されております

現在の社殿は元禄三年（1690）に水戸二代藩主の徳川光圀公が御造営の工を起し　次いで綱條公により御本殿　拝殿　神門等の建造を享保十五年（1730）に竣え　現在地に遷座　その社殿等は徳川初期を偲ぶに足る文化財としても貴重なもので茨城県文化財に指定されております

現地案内板より

【由　緒　(History)】

大洗磯前神社　由緒

　文徳実録の記録によれば　齊衡三年 常陸國鹿島郡大洗の里に御出現になり給いし時、里人の一人に神がかりして人々に教えられました。「我はこれ大己貴、少彦名神也。昔この國を造り常世の國に去ったが、東國の人々の難儀を救う為に再びこの地に帰ってきた」と仰せられました。

当時の記録によると度々地震が発生し人心動揺し、國内が乱れて居りました大國主神はこうした混乱を鎮め平和な國土を築く為に後臨されたのです。
即ち大洗磯前神社は御創立の当初から関東一円の総守護神として、大國主神御自ら此の大洗の地を選び御鎮座になったのであります。
　朝廷は國司の上奏に基づき翌天安元年八月七日官社に列せられ、次いで十月十五日には「大洗磯前薬師菩薩名神」の称号を賜りました　当時　國司の上奏から八か月で此の待遇に預ると云う事は破格の事でありまして、如何に御神徳が顕著であったかを知る事とが出来ます。
　延喜の制　当社を名神大社に列せられ東國の大社として祀田千石を領し祠宇宏壮にして、遠近の信仰を集めて栄えた事は　現存する元禄御造営以前の御本殿格子等からも察せられます　残念な事に永禄中、小田氏治の兵乱に際しその難を蒙り、御社殿以下の諸建造物は悉く焼失し　爾来　一小社に辛うじて祭祀を続けて来ました。

　水戸藩主　徳川光圀公は由緒深き名社の荒廢を見るに忍びず、元禄三年御造営の工を起し、次いで綱條公に至り本殿、拝殿、神門に至るまで建造の工を竣え、名大社にふさわしき輪奐の美を整えました。
　爾来　歴代の水戸藩主は厚く当社を尊崇し幕末に至りました。現存する社殿、神門等は当時の建造物で社殿の彫刻と共に徳川初期を偲ぶに足る文化財として貴重なものです。

　明治新政府が、神社制度を定めらるるや、明治七年九月県社に指定せられ、明治十八年四月　國幣中社に列せられましたが　大東亜戦争終熄を機に、神社は未曾有の変革を余儀なくせられ、政教分離の名の下に宗教法人としてのみその存続を容認せられました。神社が國家の宗祀たりし時代より激動の時代を経て現代に至るまで、当社は人々の厚き信仰に支えられて発展して参りました。そして悠久の昔より永遠の未来にわたり國家と共に栄えて行く事でしょう。

※「全国神社祭祀祭礼総合調査(平成7年)」[神社本庁]から参照

【神社の境内　(Precincts of the shrine)】

・境内図

・大洗磯前神社　本殿

・大洗磯前神社　中門〈本殿の前〉

・大洗磯前神社　拝殿

・〈拝殿〉彫刻

・〈拝殿前〉カエル石像〈少彦名命の神使い〉

・〈拝殿前〉奉献酒

・〈本殿向かって右　境内社〉東殿3社合殿

・〈境内社〉大神宮《主》天照皇太神

・〈境内社〉静神社《主》建葉槌命,手力雄命,高皇産霊尊,思兼神

・〈境内社〉水天宮《主》天御中主神,安徳天皇,健礼門院二位尼

・〈本殿向かって左　境内社〉西殿3社合殿

・〈境内社〉大杉神社《主》大物主命

・〈境内社〉水神社《主》罔象女命

・〈境内社〉八幡宮《主》玉依比売命,大帯姫命,応神天皇

・〈境内社〉御嶽神社《主》国常立命,大己貴命,少比古名命

・大洗磯前神社　隋神門

・〈随神門〉備前焼の狛犬

・〈随神門〉福の神さま

・手水舎

・君が代の石碑

・軍艦那珂忠魂碑《主》護国の英霊

・烏帽子岩

・大洗磯前神社　三の鳥居

・参道石段

・〈境内社〉清良神社《主》小幡宥円

・大洗磯前神社　二の鳥居

【神社の境外　(Outside the shrine grounds)】

・〈境内社〉與利幾神社《主》建御名方命

・〈境内社〉茶釜稲荷神社《主》倉稲魂命

・〈境内社〉石尊宮，稲荷宮《主》大山祇大神

・一の鳥居

・神磯の鳥居

御祭神が降臨されたと伝わる磯を「神磯(かみいそ)」と称し　神聖な場所として禁足地（足を踏み入れてはいけない場所）に建つ鳥居

この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)

この神社は　大和朝廷による編纂書〈六国史・延喜式など〉に記載があり　由緒（格式ある歴史）を持っています

〇『風土記（ふどき）』和銅6年（713）
　『続日本紀』和銅6年（713）5月甲子の条が　風土記編纂の官命であると見られ　記すべき内容として下記の五つが挙げられています

『風土記（ふどき）』和銅6年（713）の特徴について
1.国郡郷の名（好字を用いて）
2.産物
3.土地の肥沃の状態
4.地名の起源
5.古老の伝え〈伝えられている旧聞異事〉

現存するものは全て写本です
『出雲国風土記』がほぼ完本
『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態

〇『六国史（りっこくし）』
　　奈良・平安時代に編纂された官撰（かんせん）の6種の国史の総称
・『日本書紀』養老4年（720）完成
・『續日本紀』延暦16年（797）完成
・『日本後紀』承和7年（840）完成
・『續日本後紀』貞観11年（869）完成
・『日本文徳天皇実録』元慶3年（879）完成
・『日本三代實録』延喜元年（901）完成

〇『延喜式（えんぎしき）』延長5年（927）完成
　　平安時代中期に編纂された格式（律令の施行細則）全50巻　約3300条からなる

『日本文徳天皇實録（Nihon MontokuTenno Jitsuroku）〈元慶3年（879年）完成〉』に記される伝承

『国史』である『文徳天皇實録』斉衡三年(856)十二月二十九日の條に常陸国上言として　大洗礒前藥師菩薩明神社の創建の由来が記されています

【抜粋意訳】

巻八　齊衡三年（856）十二月戊戌（二十九日）

○戊戌。

常陸國より言上して曰く、

「鹿嶋郡（かしまのこほり）大洗磯前に神、新たに降れり。

初め、郡の民に海を煮て塩を為（つく）る者あり。夜半に海を望むに、天は光耀（かがやき）属（つら）なり。
明くる日、兩（ふたつ）の怪しき石ありて、水のほとりに見ゆ。高さ各々一尺ばかり、體（かたち）は神の造れるがごとく、人間の石に非（あらず）。

塩を焼く翁、これを私（ひそ）かに異（あや）しみて去った。

後（のち）一日、また二十餘（あまり）の小石が有（あり）向きあう石の左右に在りて　侍り坐（いま）すがごとくして、彩色（さいしき）常（つね）に非ざるなり。
或いは形は　沙門（仏教で出家した男性の修行者）の像のごとし。ただ耳目なし。

時に神、人に憑（かか）りて云（のたま）わく、
「我は大奈母知・少比古奈命（おほなもち・すくなひこなのみこと）なり。昔この国を造り訖（お）えて、東海へ去り往きたり。今、民を済（すく）わんがため、更（さらに）また歸（かへり）来（き）たり。」

【原文】

卷八齊衡三年（八五六）十二月戊戌〈廿九〉

○戊戌。常陸國上言。鹿嶋郡大洗磯前有神新降。初郡民有煮海爲鹽者。夜半望海。光耀屬天。明日有兩恠石。見在水次。高各尺許。體於神造。非人間石。鹽翁私異之去。後一日。亦有廿餘小石。在向石左右。似若侍坐。彩色非常。或形像沙門。唯無耳目。時神憑人云。我是大奈母知少比古奈命也。昔造此國訖。去徃東海。今爲濟民。更亦來歸。

【原文参照】

大洗礒前藥師菩薩明神社が　官社に預った旨が記されています

【抜粋意訳】

天安元年（857）八月乙丑朔辛未〈七日〉

○（この日）常陸国の大洗磯前（おほあら ひいそさき）・酒列磯前（さかつらいそさき）神などを官社に預かる。

また、
摂津の国人で散位 従八位下の岸田朝臣全繼（きしだのあそん またつぐ）に命じ　兵を帯びて伏せ、把笏（はしゃく）〈把を持たせ〉、国中の違法行為を検察させた。

【原文】

卷九　天安元年（八五七）八月乙丑朔辛未〈七〉

○八月乙丑朔辛未。在常陸國大洗磯前。酒列磯前神等預官社。』詔令攝津國人散位從八位下岸田朝臣全繼。帶兵仗。把笏。検國中非違。

【原文参照】

『延喜式（Engishiki）』巻3「臨時祭」中の「名神祭（Meijin sai）」の条　285座

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉

延喜式巻第3は『臨時祭』〈・遷宮・天皇の即位や行幸・国家的危機の時などに実施される祭祀〉です
その中で『名神祭（Meijin sai）』の条には 国家的事変が起こり またはその発生が予想される際に その解決を祈願するための臨時の国家祭祀「285座」が記されています

名神祭における幣物は　名神一座に対して　量目が定められています

【抜粋意訳】

巻3神祇　臨時祭　名神祭二百八十五座

園神社一座　韓神社二座〈已上坐宮内省〉

賀茂別雷神社一座　賀茂御祖神社二座　松尾神社二座　稲荷神社三座　貴布祢神社一座　鴨川合神社一座　御井神社一座　葛野月読神社一座　木嶋坐天照御魂神社一座　平野神社四座　梅宮神社四座　乙訓神社一座　酒解神社一座〈亦号山崎神、已上山城国、〉

・・・
・・・〈中略〉
・・・

安房神社一座〈安房国〉
玉前神社一座〈上總国〉
香取神宮一座〈下總国〉

鹿嶋神宮一座　大洗磯前薬師菩薩神社一座　静神社一座　筑波山神社一座　吉田神社一座　酒烈礒前薬師菩薩神社一座　稲田神社一座〈已上常陸国〉

・・・
・・・〈中略〉
・・・

座別に
絁（アシギヌ）〈絹織物〉5尺
綿（ワタ）1屯
絲（イト）1絇
五色の薄絁（ウスアシギヌ）〈絹織物〉各1尺
木綿（ユウ）2兩
麻（オ）5兩

嚢（フクロ）料の薦（コモ）20枚若有り（幣物を包むための薦）
大祷（ダイトウ）者〈祈願の内容が重大である場合〉

加えるに
絁（アシギヌ）〈絹織物〉5丈5尺
絲（イト）1絇を　布1端に代える

【原文参照】

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載〈This record was completed in December 927 AD.〉

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』といい　当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社（式内社）の一覧となっています

・「官社（式内社）」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）東海道　731座…大52（うち預月次新嘗19）・小679

[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）常陸國　38座（大7座・小31座）

[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）鹿島郡　2座（並大）

[名神大 大 小]　式内名神大社

[旧　神社　名称 ] 大洗礒前藥師菩薩明神社〔名神大〕
[ふ　り　が　な ]（おほあらひ いそさきの やくしほさつの あけのかみのやしろ）
[Old Shrine name]（Ohoarahi isosakino yakushihosatsuno akeno kaminoyashiro）

【原文参照】

【オタッキーポイント】（This is the point that Otaku conveys.）

あなたが　この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します

「大洗磯前神社」と一対となっている式内社「酒列磯前神社」

①大洗磯前神社（大洗町磯浜町）は

『延喜式』常陸國鹿嶋郡 大洗礒前薬師菩薩(明)神社〔名神大〕とあり　薬師菩薩⇒大己貴命を祀る　名神大社です

詳しくは　下記の記事を参照の事

延喜式内社　常陸國 鹿嶋郡 大洗礒前薬師菩薩明神社（名神大）（おほあらいそきさきやくしほさつの あけのかみのやしろ）

・大洗磯前神社（大洗町磯浜町）

②酒列磯前神社（ひたちなか市磯浜町）は

『延喜式』常陸國 那賀郡 酒烈礒前薬師菩薩神社〔名神大〕 とあり　薬師菩薩⇒少彦名命を祀る　名神大社です

詳しくは　下記の記事を参照の事

延喜式内社　常陸國 那賀郡 酒烈礒前薬師菩薩神社（名神大）（さかつらいそさきやくしほさつの かみのやしろ）

・酒列磯前神社(ひたちなか市）

福井県〔越前國〕にある〔大洗磯前神社・酒列神社〕

茨木県〔常陸國〕の名神大社〔大洗磯前神社・酒列磯前神社〕が　福井県〔越前國〕にもあり　茨城県に合致します

何か関係があると想われますが　手元の資料からは不明です

念のため　両県の地図を載せておきます

福井県〔越前國〕の4社の内2社は　式内論社にもなっています

延喜式内社　越前國 丹生郡 麻氣神社（まけの かみのやしろ）

・酒列神社（越前市牧町）

延喜式内社　越前國 丹生郡 大山御板神社（おほやまみたの かみのやしろ）

・大洗磯崎神社（丹生郡越前町乙坂）

【神社にお詣り】(Here's a look at the shrine visit from now on)

この神社にご参拝した時の様子をご紹介します

鹿島臨海鉄道大洗鹿島線　大洗駅から東へ約2.9km　車での所要時間は5～6分程度

大洗磯前神社（大洗町磯浜町）に参着

駐車場は混雑していました

参拝者が多いので案内は充実しています

駐車場からの通路には　石碑「御鎮座　壱千百四拾年記念事業碑」があります

大洗磯前神社案内

東日本大震災復興の石碑

境内の案内図

神馬舎があります

東南方向を向いている社殿　境内　参道があり　三の鳥居からは　太平洋を望めます

振り返ると　隋神門があります

隋神門の前には　備前焼の狛犬

隋神門をくぐり抜けると　社殿の建つ境内となります

拝殿にすすみます
拝殿の前には　カエルの石像〈少彦名命の神使い〉が置かれています

賽銭をおさめ　お祈りをします
ご神威に添い給うよう願いながら礼　鎮まる御祭神に届かんと　かん高い柏手を打ち　両手を合わせ祈ります

境内の向かって左から本殿を一周するようになっています

向かって左には

・〈本殿向かって左　境内社〉西殿3社合殿
・〈境内社〉大杉神社《主》大物主命
・〈境内社〉水神社《主》罔象女命
・〈境内社〉八幡宮《主》玉依比売命,大帯姫命,応神天皇

この位置から　本殿を眺めると中門も見えています

本殿

・〈本殿向かって右　境内社〉東殿3社合殿
・〈境内社〉大神宮《主》天照皇太神
・〈境内社〉静神社《主》建葉槌命,手力雄命,高皇産霊尊,思兼神
・〈境内社〉水天宮《主》天御中主神,安徳天皇,健礼門院二位尼

社殿に一礼をして　参道石段を下り　礒鳥居へと向かいます

石段を下って　道を渡り　礒へ下りると「神磯の鳥居」があります

御祭神が降臨されたと伝わる磯を「神磯(かみいそ)」と称し　神聖な場所として禁足地（足を踏み入れてはいけない場所）に建つ鳥居

【神社の伝承】(I will explain the lore of this shrine.)

この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します

『神社覈録（Jinja Kakuroku）〈明治3年（1870年）〉』に記される伝承

式内社　大洗礒前藥師菩薩明神社〔名神大〕について　所在は゛宮田郷礒濱村に在す、゛〈現　大洗磯前神社（大洗町磯浜町）〉と記しています

【抜粋意訳】

大洗礒前藥師菩薩神社　名神大

大洗礒前は於保安良比伊曽佐伎、藥師は久須志と訓べし、菩薩は昔読也、

○祭神　大己貴命、〔頭注〕

○宮田郷礒濱村に在す、〔常陸志〕

　例祭　月、日、

〇式三、〔臨時祭〕名神祭二百八十五座、〔中略〕常陸國 大洗磯前藥師菩薩神社一座、

官社　名神　菩薩
　文徳實録、天安元年八月辛未、在ニ 常陸國 大洗礒前神預ニ 官社、同年十月己夘、在ニ 常陸國 大洗礒前神、號ニ 藥師菩薩名神、

鎭坐
　文徳實録、斎衡三年十二月戊戌、常陸國上言、鹿島郡 大洗礒前有 神新降、初郡民有ニ 煮海爲鹽者、夜半望海、光輝属天、明日有ニ 兩怪石、見在ニ 水次、高各尺計、體ニ 於神造、非ニ 人間石、塩翁私異 之去、後一日、亦有ニ 廿餘小石、在ニ 向石左右、似若ニ 侍坐、彩色非常、或形ニ 沙門、唯無ニ 耳目、時神憑人云、我是大奈母知少彦名命也、昔造ニ 此國訖、去往ニ 東海、今為濟民、更亦来歸、

【原文参照】

『神祇志料（Jingishiryo）』〈明治9年（1876）出版〉に記される内容

式内社　大洗礒前藥師菩薩明神社〔名神大〕について　所在は゛今 磯濱村 大洗磯前山上に在り、゛〈現　大洗磯前神社（大洗町磯浜町）〉と記しています

【抜粋意訳】

大洗磯前藥師菩薩神社、

今 磯濱村 大洗磯前山上に在り、〔二十八社考、鎭守帳〕〔○按磯濱舊名宮田郷也、〕

大己貴命 少彦名命を祀る、〔文徳実録〕
石を以て靈形とす、其一長二尺五寸、其一長八寸、〔鎭守帳〕

上古 大已貴命 少彦名命と力を戮せ心を一にして、天下を經營め、又 民の爲に醫藥の方を定め給ひ、其後 少名彦命 熊野御碕より、常世國に渡坐に及て、大己貴命 獨其未た成らさる所を巡り坐て、造成給ひき、〔日本書紀〕

文徳天皇 齋衡三年十二月戊戌、大洗磯前に天降り坐神あり、初本郡の民鹽を煮る者、夜半海上 光耀きて天に属るを見たりしか、明旦 水次に兩怪石 高各一尺許なるあり、又 其明日に至て、二十餘 小石自ら其左右に列り、倍侍るか如きを見て、私に異しと思ひき、爰に神憑りして、我は大奈母知少此古奈命也、昔此國を造終て、束海に往まし、今民を濟はむとして歸來つと教給ふ由を奏しき、

故 天安元年八月辛未、官社に預らしめ、十月已卯、藥師菩薩名神の號を授け給ひ、〔文徳実録〇按本社 及 酒列二社、、古へ 醫藥の方を定め給ふ事ありしに依て、藥師（ヤクシノカミ）とも云ひしを、其字音の佛名に由緣あるより、菩薩の号を加へたるにや、大凡甚も尊く恐き天神地祇に、彼穢く汚はしき佛号を加ふる理あるへくもあらさるを、二社また宇佐神などに加へ奉るは、中世以降 本地垂迹の説起りしより、天下おしなべて佛を祟むる事 神の如くなりし風習なりしかは、彼穢き名を加ふるをも、怪しとはせず、却てよき事のごとく思ひし故なるへし、姑附て考に備ふ、〕

醍醐天皇　延喜の制、名神大社に列る、〔延喜式〕

凡　毎年十二月晦より正月七日に至るまで、近村悉く鐘磬（しょうけい）を禁め、日毎に神饌を供ふ、八月朔、宮崎網掛 鹿嶋祠官 矛盾を持來り、哄喊をなし、進て神社の北齋場に至て祭を行ふ、九月廿五日、有賀村 鹿嶋祠官 又 矛を捧げ神殿に安置て、祭を修む、盖 鹿嶋神 天神の命に依て、大已貴命を順服しめ給へる遺風也、〔大洗明神本緣〕

【原文参照】

『特選神名牒（Tokusen Shimmyo cho）〈明治9年（1876）完成〉』に記される伝承

式内社　大洗礒前藥師菩薩明神社〔名神大〕について　所在は゛磯濱村 (東茨城郡磯濱町大字大洗 )゛〈現　大洗磯前神社（大洗町磯浜町）〉と記しています

【抜粋意訳】

大洗磯前藥師菩薩神社　名神大

祭神
　大巳貴命
　少彥名命

今按　式にのする所一座なれど　文德實錄の文による時は二座ときこえ　今も神體石にて二座ます由なれば　二神なるを式には一座に數まへられたるものなるべし　文徳實錄に齊衡三年十二月戊戍 常陸國上言 鹿島郡 大洗磯前有神 新降初郡民有煮海爲鹽者夜半望海光耀属天明曰有兩怪石見在水次高名尺許體於神造非人間石鹽翁私異之去後一日亦有二十餘小石在而石左右似若侍坐彩色非常或形像沙門唯無耳目時神憑人云我是大奈母知少比古奈命也 昔造此國訖去往東海今為濟民更亦来歸とみえたる神異に因て　此に祭られ玉へる也

官社　文徳天皇　天安元年八月辛未　在常陸國大洗磯前神預官社

祭日　八月一日　九月二十五日 (改九月九日 )　

社格　縣社 (明治十八年四月二十二日列國幣中社)

所在　磯濱村 (東茨城郡磯濱町大字大洗 )

【原文参照】

大洗磯前神社（大洗町磯浜町）に「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

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