久須夜神社（小浜市堅海）〈『延喜式』久湏夜神社〉

久須夜神社（くすやじんじや）は　久須夜ヶ岳を神と崇めた古代信仰とされ　山中に「大神岩」〈里人は狼岩といって畏怖〉があり　往古 大神がこの岩上に鎮座されたと云う　社伝に　社殿の創建は大化元年（645）・斎衡年間（854～857）現在地に社殿を建て鎮座　延喜式内社　若狭國 遠敷郡 久湏夜神社（くすやの かみのやしろ）です

1.ご紹介（Introduction）

　この神社の正式名称や呼ばれ方　現在の住所と地図　祀られている神様や神社の歴史について　ご紹介します

【神社名(Shrine name）】

久須夜神社（Kusuya shrine）

【通称名(Common name)】

【鎮座地　(Location)　】

福井県小浜市 堅海（かつみ）１０－４

【地　図 (Google Map)】

【御祭神　(God's name to pray)】

《主》大己貴命（おほなむちのみこと）

【御神徳　(God's great power)】（ご利益）

【格　式　(Rules of dignity) 】

・『延喜式神名帳（engishiki jimmeicho ）927 AD.』所載社

【創　建　(Beginning of history)】

久須夜神社

祭神　大己貴命（亦の御名を大國主命）

例祭　六月十一日

由緒

　創祀勧請は詳らかならず、社殿の創建は、 文化二年乙巳年と伝えている。
延喜式内社である。
境内山中に岩があり大神岩という。往古 大神がこの岩上に鎮座されたという。
里人は狼岩といって畏怖している。
又 常に御憩いなされた御腰掛岩があり、 一帯を烏帽子の森と称し現境内がその一部を占めている。今も尚堅く不浄を禁じている。斎衡年間（西暦八百五十四年）現在地に社殿を建て鎮座される。若狭國の名山 久須夜岳は久須夜神社の名に依って生れ、久須の夜雨は若狭八景に数へられている、

現地石碑文より

『若狭遠敷郡誌』大正11年（1922）に記される内容

【抜粋意訳】

久須夜神社

　指定村社にして同村堅海浦字宮ノ元にあり、祭神は大己貴命にして　延喜式に久須夜神社とあり、國帳に從二位 久須夜大明神とあり、

文永二年 大田文不輸田の條下 神田の内に久須夜宮壹町堅海村とあり、國領志萬郷の除田中神田二十三町三反の内 久須夜廿一町堅海村とあり、此廿壹町は壹町の誤寫なるべし 神名帳考證に楠祖、屋船神、古事記云、鳥之石楠船神とあり、

境内神社に天満社あり、祭神 菅原道眞公 同浦宮の元より明治四十三年移轉し、山神社は祭神大山祗命にして萬治二年字高畑に鎮座ありしを右同時移轉す、八幡神社 祭神 應神天皇、小玉社 祭神 毘賣大神。

【原文参照】

【由　緒　(History)】

『式内社調査報告第十五巻』昭和59年に記される内容

【抜粋】

若狭國 遠敷郡

久湏夜（クスヤノ）神社

【社名】

　『若狭郡縣志』には「久須夜大明神社」、『若狭國志』『神社覈録』『特特選神名牒』神社明細帳には「久須夜神社」とあり、伴信友の『神社私考』および明治四年の『神紙志料』には「クスヤノ」と訓が付けてある。

【所在】

　福井縣小濱市 堅海（カツミ）（若狭國遠敷郡堅海浦字宮ノ元）國鐵小濱線小濱驛の北北西六キロメートル、小濱灣の東半部を圍む内外海半島の主峯 久須夜岳(標高六一九メートル)の南麓、小濱灣に臨む堅海集落の東方に鎭座し、延長二〇○メートル餘の長い參道が南方へ伸びてゐる。「久須の夜雨」は若八景の一つに數へられてゐる。

【祭神】

　『神社私考』には「國帳に云、從二位久須夜大明神」とあり、「當都字久ノ浦にも久須谷大明神あり、祭日も同じ、勝海浦より徒し祀れるなるべし」とある。元禄年間の『若都志』には　傳言多大大明同躰神而所祭 大己貴命也產神而　二月十一日 九月十一日祭之　若狭國神階記　遠敷郡從二位久須夜大明神とある。しかし寛延二年(一七四九)の『若狭國志』には「相傳祭神大己貴命」とあり、『神社覈録』にも「祭神大己貴命」、神明細帳・『特選神名牒』・福井縣神社明細書・『內外海誌』もすべて「大己貴命」とある。

・・・
・・・〈中略〉
・・・

村誌『内外海誌』には、「山中に岩があり大神岩といひ、往古、大神がこの岩上に鎮座された。また大神の憩はれた御腰掛岩、このあたり一帶を烏帽子の森と稱し奥深い社叢をなしてをり、今も尚、堅く不淨を禁じてゐる。」とあるが、山岳そのものを神と崇めた古代信仰の姿をうかがうことができる。

【由緒】

　神社明細帳には「由緒不詳、式内ノ神社也、大正二年次ノ如ク由緒記載許可サル」とあつて、若狭國志・神社私考 等の記事が掲げてある。福井縣神社明細書には「舊村社、創祀は古く不評なるも、社殿の創建は大化元年(六四五)乙巳年と傳へてゐる、式内社」とある。文永二年(一二六五)の若狭國惣田數帳寫に「久須夜宮壹町　堅海村」とあるが、現在も海に面しながら漁業権をほとんど持たない。久須夜神社の別當寺として應安二年(一三六九)に創建された長慶院の木造聖観音菩薩坐像は重要文化財(昭和四十二年三月指定)である。

【神職】

　昭和六十年三月まで数十年にわたって勤めた阿納尻の竹中皆二氏のあと、小浜市北塩屋の宗像神社宮司小松信満氏が兼務している。

【祭祀】
・・・
・・・〈中略〉
・・・

【境内地】
・・・
・・・〈中略〉
・・・

【社殿・施設】
・・・
・・・〈中略〉
・・・
境内には安政五年(一八五八)寄進の石燈籠があり、また、伊勢神宮・出雲大社・山王・白山・稲荷社の遙拝所がある。

【古墳・祭祀遺跡】
・・・
・・・〈中略〉
・・・

(小林健壽郎)

【原文】

【神社の境内　(Precincts of the shrine)】

・久須夜神社　本殿

・〈本殿向かって右脇 境内社〉八幡社《主》応神天皇

・〈本殿向かって左脇 境内社〉小玉社《主》比売大神

・〈本殿基壇向かって右下 境内社〉天満社《主》菅原道眞公

・〈本殿基壇向かって左下 境内社〉山神社《主》大山祇神

・久須夜神社　拝殿

・〈境内社〉秋葉社

・〈磐座〉出雲大社

・参道・一の鳥居・二の鳥居

・社頭・社号標

【神社の境外　(Outside the shrine grounds)】

・〈参道脇隣地〉廃校「堅海小学校」

・大神岩（久須夜神社 旧地）

大神岩（おおかみいし）〈久須夜神社旧地〉は　往古 大神がこの岩上に鎮座されたという　里人は 狼岩といって畏怖している

・大神岩（小浜市堅海）〈久須夜神社旧地〉の記事を参照

この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)

この神社は　大和朝廷による編纂書〈六国史・延喜式など〉に記載があり　由緒（格式ある歴史）を持っています

〇『風土記（ふどき）』和銅6年（713）
　『続日本紀』和銅6年（713）5月甲子の条が　風土記編纂の官命であると見られ　記すべき内容として下記の五つが挙げられています

『風土記（ふどき）』和銅6年（713）の特徴について
1.国郡郷の名（好字を用いて）
2.産物
3.土地の肥沃の状態
4.地名の起源
5.古老の伝え〈伝えられている旧聞異事〉

現存するものは全て写本です
『出雲国風土記』がほぼ完本
『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態

〇『六国史（りっこくし）』
　　奈良・平安時代に編纂された官撰（かんせん）の6種の国史の総称
・『日本書紀』養老4年（720）完成
・『續日本紀』延暦16年（797）完成
・『日本後紀』承和7年（840）完成
・『續日本後紀』貞観11年（869）完成
・『日本文徳天皇実録』元慶3年（879）完成
・『日本三代實録』延喜元年（901）完成

〇『延喜式（えんぎしき）』延長5年（927）完成
　　平安時代中期に編纂された格式（律令の施行細則）全50巻　約3300条からなる

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載〈This record was completed in December 927 AD.〉

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』といい　当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社（式内社）の一覧となっています

・「官社（式内社）」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）北陸道　352座…大14（うち預月次新嘗1）・小338

[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）若狭国　42座（大3座・小39座）

[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）遠敷郡　16座（大2座・小14座）

[名神大 大 小]　式内小社

[旧　神社　名称 ] 久湏夜神社
[ふ　り　が　な ]（くすやの　かみのやしろ）
[Old Shrine name]（Kusuya no kamino yashiro）

【原文参照】

【オタッキーポイント】（This is the point that Otaku conveys.）

あなたが　この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載の「久須（くす）」の名の付く式内社について

大和國　城下郡　久須々美神社（くすすみの　かみのやしろ）

・久須須美神社(田原本町蔵堂)〈村屋坐彌冨都比賣神社　境内〉

河内國　交野郡　久須々美神社 鍬（くすすみの　かみのやしろ）

・片埜神社（枚方市）に合祀

・〈久須々美神社の旧鎮座地〉九頭神廃寺跡（枚方市牧野本町）

延喜式内社　若狭國 遠敷郡 久湏夜神社（くすやの かみのやしろ）

・久須夜神社（小浜市堅海）

・大神岩（小浜市堅海）〈久須夜神社旧地〉

【神社にお詣り】(Here's a look at the shrine visit from now on)

この神社にご参拝した時の様子をご紹介します

JR小浜線　小浜駅から県道107号経由で小浜湾の内海沿いに北上して約12.2km　車での所要時間は20～25分程度

堅海方面に向かいます

堅海浦を見おろしながら県道107号を西へ下っています

堅海は（かつみ）と呼びます

4/25早朝の参拝でしたが　参道の奥にある久須夜ヶ岳の山のふもと全体に　霧のような霞のような感じで　白くたなびいている　何とも幻想的でした

これが「若八景の一つに数えられている゛久須の夜雨゛」の名残りなのでしょうか?

久須夜ヶ岳の麓から南へ参道が伸びています

久須夜神社（小浜市堅海）に参着

一の鳥居の扁額には「久須夜神社」とあり　一礼をしてからくぐり抜けます

鳥居の左脇には廃校となった「堅海小学校」の校舎が残っていました
校庭跡からは　堅海浦が見えていました

続いて　石燈籠が建ち　二の鳥居があり　くぐり抜けます

木立の中の参道を進みます

手水舎の横を流れる側溝には　山から湧き出たであろう清水が　滾々と流れています

清めてから　参道を進むと　玉垣に囲まれた境内に社殿が建っているのが見えてきます

杉の木の横に　磐座でしょうか　苔むした岩が゛出雲大社゛として祀られています

これは「大神の憩はれた御腰掛岩」なのでしょうか?

拝殿にすすみます

拝殿は　厳しい冬場を越すために　覆い板が付けられています

拝殿を廻り込むと　奥には一段高い基壇があり　本殿が祀られています

本殿は覆い屋の中にあり

賽銭をおさめ　お祈りをします
ご神威に添い給うよう願いながら礼　鎮まる御祭神に届かんと　かん高い柏手を打ち　両手を合わせ祈ります

本殿の覆い屋の両脇には境内社が祀られています

境内にも境内社が祀られています

社殿に一礼をして　境内を戻ります

木立の中の参道　磐座゛出雲大社゛の横を戻ります

二の鳥居を戻ります

一の鳥居を抜けて　南へ向いている参道を戻ります

西方向の堅海（かつみ）の街と堅海浦へと進み戻ります

それにしても　小浜湾内は　うねり一つ無く　まるで湖の様にみえました

【神社の伝承】(I will explain the lore of this shrine.)

この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します

『神社覈録（Jinja Kakuroku）〈明治3年（1870年）〉』に記される伝承

式内社　久須夜神社について　所在は゛下中郡 堅海浦 久須夜嶽下に在す、゛〈現　久須夜神社（小浜市堅海）〉と記しています

【抜粋意訳】

久須夜神社

久須夜は假字也

○祭神 大己貴命〔國志、郡縣志、私考〕

○下中郡 堅海浦 久須夜嶽下に在す、〔同上〕

　例祭　二月十一日、九月十一日、

神位
　本國神名帳、從二位 久須夜明神、

【原文参照】

『神祇志料（Jingishiryo）』〈明治9年（1876）出版〉に記される内容

式内社　久須夜神社について　所在は゛今　堅海浦 久須夜嶽の下にあり゛〈現　久須夜神社（小浜市堅海）〉と記しています

【抜粋意訳】

久須夜（クスヤノ）神社

今　堅海浦 久須夜嶽の下にあり

【原文参照】

『特選神名牒（Tokusen Shimmyo cho）〈明治9年（1876）完成〉』に記される伝承

式内社　久須夜神社について　所在は゛堅海浦久須夜嶽下（遠敷郡内外海村大字堅海浦）゛〈現　久須夜神社（小浜市堅海）〉と記しています

【抜粋意訳】

久須夜神社

祭神　大己貴命

祭日　九月十一日
社格　村社

所在　堅海浦久須夜嶽下（遠敷郡内外海村大字堅海浦）

【原文参照】

久須夜神社（小浜市堅海）に「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

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