加津良神社（八尾市萱振町）〈『日本三代実録』加津良神・『延喜式』加津良神社〉

加津良神社（かつらじんじゃ）は　延喜式内社　河内國 若江郡 加津良神社（かつらの かみのやしろ）で　古よりこの地に鎮座しており〈明治期に旧 栗栖神社に合祀されたが　戦後　旧地に復活〉鎮座地名の萱振（かやふり）の名について゛祭事に神前にて松明（たいまつ）を振て神をいさむるなり　故に萱振の名あり゛と云う

1.ご紹介（Introduction）

　この神社の正式名称や呼ばれ方　現在の住所と地図　祀られている神様や神社の歴史について　ご紹介します

【神社名(Shrine name）】

加津良神社（Katsura shrine）

【通称名(Common name)】

【鎮座地　(Location)　】

大阪府八尾市萱振（かやふり）町5-27

【地　図 (Google Map)】

【御祭神　(God's name to pray)】

《主》素戔嗚尊（すさのをのみこと）

【御神徳　(God's great power)】（ご利益）

【格　式　(Rules of dignity) 】

・『延喜式神名帳（engishiki jimmeicho ）927 AD.』所載社

【創　建　(Beginning of history)】

加津良神社 縁起

　そもそも當社は官幣式内 加津良神社と號す。祭神は天祖天照大神の御弟、勝速須佐男ノ尊なり、太古此國に大河ありし時、萱の舟に乗りて来たまひ鎮座して宮となる　近村の土民　之れを敬拝し産土神となす、

　其の後　神前に於て萱の大松明を振り奉れば　多奈都物始め諸木片草に至るまで豊に實を結び　黎民の家財富み榮ゆ　是れによって　此の里を萱振と名づく　毎年六月十四日、十一月十五日 (陰暦)は　祭典にて氏子の輩は　神前に萱の大松明を振りて賑々しく神をまつる

　降りて　人皇五十六代 清和天皇の御字 貞観九年 (千八十余年前)二月 勅使を以て官社に列せらる、 (延喜式 三代實録神名帳に記載せられたり 註 三代實録とは宇多天皇の御代に菅原道眞等が主掌となり清和、陽成、光孝 三天皇の時代を記したる編纂書なり)

　其の後　第六十ー代朱雀天皇の御代　天慶三年 (一千年前)正月　平将門叛せしにより　當神社に於ても　牛頭天王を祭り　将門誅伏の大祈禱をなす、之れより加津良神社の社名はいつか消えて　牛頭天王社と稱するに至る
　さて牛頭天王を祭りし由来は　遠く第四十四代 元正天皇の朝　靈亀二年 (千二百三十余年前)に吉備、眞備か遣唐使多治比、縣守に従ひ　唐土に渡り留学せしに一夜神来りまして告げて宣はく　汝常に吾を祭る、吾高山に鎮座して汝を護ると　眞備は驚き夢覚めて　拝謝黙禮す　而して夢の告により　西方の比摩羅亜山に登れば　山嶺牛頭に似たる　四面幽静にして旋檀の情香ひとり漂う　眞備は之れにより牛頭天王を厚く崇々まつるに至る
　後 四十五代 聖武天皇の天平五年 (千二百十余年前)歸朝して備前の國に牛頭天王の社を建つ
　然るに此れより百二十五年を経て　貞観十八年に疫病流行して罹病する者數多し時に　神託ありて曰く　疫病の流行するは吾の所為なり　速に吾の神輿を八坂に遷すべし　と依而　齋主は直ちに我が臺字を毀ち　以て京都の八坂に神社を建てたりしに　忽ちにして疫病消滅せりと
　此の霊験あらたかなるにより　加津良神社に於ても　牛頭天王を祭るに至れり　此の時より萱の松明と共に團子も供したりして　以て當神社の祭禮を團子茶祭と稱す

　其の頃　社頭に大いなる楠の木あり　此の木の根を堀りて川に流したり　今楠根川といへるはその川なり

　昔は　當神社に相當の社領地ありしも　百四代 後柏原天皇 (四百四十年程前)の御代に至り　所々に神社の創建する事多く　為に當神社の社領も少くなり　今は境内八畝十二歩 (府道の分も含む)あるのみとなれり　以前は多加津良 (今の高塚か)に七八段の社領地ありしも　慶長十七年 (三百三十余年前)十一月　桐市正檢地の際　取り上げられたりと　其の外二畝歩ばかりの神道といへる森ありて　龍神を祀る

　寛永年間 (三百二十年程前)時の、代官、高西夕雲といへる者　深く信仰し　時々参詣せしと　其れより西に小字鳥居といへる所あり　本社拝殿の西向きより推して　此の地名　鳥居の邊に華表ありしならん　又　北隣接の錦部村 (西郡か)との境に御迎へといへる小字ありて神輿渡御の御旅所なりしと

　明治元年　各神社取調べの際　往古の通り　式内加津良神社と補す、明治五年四月七日、境縣より御神體の御神鏡を奉納せらる　其の神鏡の裏に萱振坐加津良神社神爾と記す、後　明治四十一年三月府道の貫通に付鳥居を拝殿の前に移す

昭和二十六年九月　加津良神社縁起　寫

拝殿に張られた案内紙の文より

【由　緒　(History)】

式内社　加津良神社

　この加津良神社は「河内名所図会」では萱振村にありとしている。祭神は素戔嗚（すさのを）命であるが、現在は牛頭天王（ごずてんのう）と称している。疫病を治める神として祀られた。貞観九（八六七）年二月二十六日官社となる。
　昔は社地が広く、宮跡、神道森、鳥居、西松馬場などの地名が残っている。明治四十一年、栗栖（くるす）神社に合祀されたが戦後復活した。

八尾市教育委員会

現地石碑文より

【神社の境内　(Precincts of the shrine)】

〈道の向かいに公園〈萱振町七丁目児童遊園〉二宇の祠が北向きに祀られています〉

・〈境内社〉琴比羅社・水分社

【神社の境外　(Outside the shrine grounds)】

〈明治四十一年（1908）旧 栗栖神社〈現八尾神社 〉に合祀されたが　戦後　旧地（現在地）に復活〉

延喜式内社　河内國 若江郡 栗栖神社（貞栗以下加）（くるすの かみのやしろ）

・八尾神社（八尾市本町）

この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)

この神社は　大和朝廷による編纂書〈六国史・延喜式など〉に記載があり　由緒（格式ある歴史）を持っています

〇『六国史（りっこくし）』
　　奈良・平安時代に編纂された官撰（かんせん）の6種の国史〈『日本書紀』『續日本紀』『日本後紀』『續日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代實録』〉の総称

〇『延喜式（えんぎしき）』
　　平安時代中期に編纂された格式（律令の施行細則）

〇『風土記（ふどき）』
　『続日本紀』和銅6年（713）5月甲子の条が　風土記編纂の官命であると見られ　記すべき内容として下記の五つが挙げられています

1.国郡郷の名（好字を用いて）
2.産物
3.土地の肥沃の状態
4.地名の起源
5.古老の伝え〈伝えられている旧聞異事〉

現存するものは全て写本

『出雲国風土記』がほぼ完本
『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損した状態

『日本三代實録（Nihon Sandai Jitsuroku）〈延喜元年（901年）成立〉』に記される伝承

河内國の神々と共に〈若江郡　加津良神〉が　官社に預ったこと
豊後國　鶴見山嶺で　噴火と地震があった様子が記されています

【抜粋意訳】

卷十四　貞觀九年（八六七）二月廿六日丙申

○廿六日丙申 以て

河内國
大縣郡　石神　常世岐姫神　志紀郡林氏神　辛國神
若江郡　加津良神　中村神　並に預に官社に

大宰府言　從五位上火男神　從五位下火賣神　二社在
豐後國　速見郡鶴見山嶺　山頂有三池　一池泥水色青　一池黒　一池赤　去正月廿日池震動　其聲如雷　俄而如流黄　遍滿國内　磐石飛乱　上下无數　石大者方丈　小者如甕　晝黒雲蒸　夜炎火熾　沙泥雪散　積於數里　池中元出温泉　泉水沸騰　自成河流　山脚道路　徃還不通　温泉之水　入於衆流　魚醉死者无萬數　其震動之聲經歴三日

【原文参照】

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載〈This record was completed in December 927 AD.〉

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』といい　当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社（式内社）の一覧となっています

・「官社（式内社）」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）畿内 658座…大（預月次新嘗）231（うち預相嘗71）・小427

[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）河内國　113座（大23座（並月次新嘗・就中8座預相嘗）・小90座（並官幣））

[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）若江郡　22座（大2座・小20座）

[名神大 大 小]　式内小社

[旧　神社　名称 ] 加津良神社
[ふ　り　が　な ]（かつらの かみのやしろ）
[Old Shrine name]（Katsura no kaminoyashiro）

【原文参照】

【オタッキーポイント】（This is the point that Otaku conveys.）

あなたが　この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します

類社として　式内社で「かつらのかみのやしろ」の音を持つ神社について

延喜式内社　河内國 若江郡 加津良神社（かつらの かみのやしろ）

「縵氏」が祖神を祀ったと云われます
「縵氏」には　百済の渡来系の「縵連」と　物部系の「縵連」の二つがあります

当地付近は　物部氏の拠点であったとされています

・加津良神社（八尾市萱振町）

延喜式内社　播磨國 多可郡 加都良乃命神社（かつらのみことの かみのやしろ）の論社

類社として　播磨國 多可郡の式内社「加都良乃命神社」について

・加都良神社（多可町中区間子）

・加都良神社（多可町中区岸上）〈御旅所〉

・加都良神社（多可町中区天田）

延喜式内社　阿波國 勝浦郡 勝占神社（かつらの かみのやしろ）の論社

・勝占神社（勝占町中山）

【神社にお詣り】(Here's a look at the shrine visit from now on)

この神社にご参拝した時の様子をご紹介します

近鉄大阪線　近鉄八尾駅から北へ約1.5m　車7～8分程度

一説によると　当社は「縵（かずら）氏」が祖神を祀ったとの伝わります
当地一帯は　かつて物部氏の拠点でしたから　物部系の史書『先代旧事本紀』に記されている物部系氏族「奄智縵連」「三川縵連」「磯城縵連」「比尼縵連」と関係があるのかもしれません

加津良神社（八尾市萱振町）に参着

一礼をして鳥居をくぐると　すく目の前が拝殿となっています

拝殿にすすみます

賽銭をおさめ　お祈りをします
ご神威に添い給うよう願いながら礼　鎮まる御祭神に届かんと　かん高い柏手を打ち　両手を合わせ祈ります

拝殿の脇に塀があり　本殿には近づけません

【神社の伝承】(I will explain the lore of this shrine.)

この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します

『河内名所圖會（Kawachi Meisho Zue）』〈享和元年（1801年）刊〉に記される伝承

延喜式内社 加津良神社について　鎮座地の萱振（かやふり）村の村名について゛祭事に神前にて松明（たいまつ）を振て神をいさむるなり　故に萱振（かやふり）の名あり゛と記しています

【抜粋意訳】

河内名所図会四　若江郡

加津良（かつら）神社

　萱振（かやふり）村にあり
　延喜式出　三代実録云 貞観九年二月預に官社に
　今牛頭天王と称す　此の所の生土神とす
祭事の時は　生土（うぶこ）の輩　神前にて松明（たいまつ）を振て神をいさむるなり　故に萱振（かやふり）の名あり
又　地蔵院の本尊は　阿弥陀の画像　恵心の筆なり
毘沙門堂　其外　伽藍の旧跡あり

【原文参照】

『神社覈録（Jinja Kakuroku）〈明治3年（1870年）〉』に記される伝承

延喜式内社 加津良神社について　所在は゛萱振村に在す、今天王と称す、゛〈現 加津良神社（八尾市萱振町）〉と記しています

【抜粋意訳】

加津良神社

加津良は假字也

○祭神 加都良命歟、萱振村に在す、今天王と称す、〔河内名所圖會〕

○姓氏録、〔大和國諸蕃〕蔓連、百済人狛之後也、

　〔連胤〕按るに、播磨國 多可郡 加都良命神社、大津乃命神社あり、
當國 丹比郡 大津神社、是を見れば 加津良大津の神は、由縁ありて 當國 播磨國ともに相離れず坐すにやあらむ、猶考ふべし、

類社
　播磨國 多可郡 加都良命神社、阿波國 勝浦郡 勝占神社、

官社
　三代實録、貞観九年二月二十六日丙申、以に河内國 若江郡 加津良神、預に官社、

【原文参照】

『神祇志料（Jingishiryo）』〈明治9年（1876）出版〉に記される内容

延喜式内社 加津良神社について　所在は゛今　萱振村にあり、゛〈現 加津良神社（八尾市萱振町）〉と記しています

【抜粋意訳】

加津良（カツラノ）神社

今　萱振村にあり、〔式社細記〕

清和天皇 貞観九年二月丙申、官社に預る、〔三代実録〕

凡　六月九日十五日祭を行ふ、〔式社細記〕

【原文参照】

『特選神名牒（Tokusen Shimmyo cho）〈明治9年（1876）完成〉』に記される伝承

延喜式内社 加津良神社について　所在は゛萱振村　南萱振村　境　（中河内郡八尾町大字萱根）゛〈現 加津良神社（八尾市萱振町）〉と記しています

【抜粋意訳】

加津良（カツラノ）神社

祭神

　今按　祭神　加津良命ならむ歟　播磨國 多可郡 加都良命神社 大津乃命神社あり　當國に大津神社と加津良神社あるも由あり

加那良命は　播磨國 多可郡 加都良乃命神社の條に云る如く　葦原志許乎命の黑葛を投たる故事により葛郷と云もあるを思ふに　大已貴命を祭れるものなるべし

官社
　清和天皇　貞観九年二月二十六日丙申、以に河内國 若江郡 加津良神、預に官社、

社格　郷社

所在　萱振村　南萱振村　境　（中河内郡八尾町大字萱根）

【原文参照】

加津良神社（八尾市萱振町）に「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

河内国　式内社　113座（大23座（並月次新嘗・就中8座預相嘗）・小90座（並官幣）について　に戻る