子安神社〈奈疑知命神社〉（河津町縄地）

子安神社（こやすじんじゃ）は　里人には「乳の神様」と呼ばれています　式内社「 奈疑知命神社（なきちのみことの　かみのやしろ）」は　かつては　縄地川（なわじ）上流の「なぎの森」に鎮座していたと伝わり　後に子安社の地に遷座したと考えられています

1.ご紹介（Introduction）

　この神社の正式名称や呼ばれ方　現在の住所と地図　祀られている神様や神社の歴史について　ご紹介します

【神社名(Shrine name）】

子安神社（Koyasu Shrine）
（こやすじんじゃ）

　[通称名(Common name)]

奈疑知命神社（なきちのみことじんじゃ）

【鎮座地　(Location)　】

静岡県賀茂郡河津町縄地1

　[地　図 (Google Map)]

【御祭神　(God's name to pray)】

《主》奈疑知命（Nakichi no mikoto）

【御神格　(God's great power)】（ご利益）

【格　式　(Rules of dignity) 】

・『延喜式神名帳（Engishiki jimmeicho）』所載社

【創　建　(Beginning of history)】

創建年代は不詳

【由　緒　(History)】

旧社地は　縄地川上流の「なぎの森」に鎮座していたと伝

【境内社　(Other deities within the precincts)】

・乳の神様

【境外社　(Related shrines outside the precincts)】

この神社の予備知識(Preliminary knowledge of this shrine)

この神社は　由緒（格式ある歴史）を持っています

『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』(927年12月編纂)に所載
（Engishiki Jimmeicho）This record was completed in December 927 AD.

『延喜式（Engishiki）律令の施行細則 全50巻』〈平安時代中期 朝廷編纂〉
その中でも巻9・10を『延喜式神名帳（Engishiki Jimmeicho）』といい　当時〈927年12月編纂〉「官社」に指定された全国の神社（式内社）の一覧となっています

・「官社（式内社）」名称「2861社」
・「鎮座する天神地祇」数「3132座」

[旧　行政区分]（Old administrative district）
(神様の鎮座数）東海道　731座…大52（うち預月次新嘗19）・小679
[旧　国　名　]（old county name）
(神様の鎮座数）伊豆国　92座（大5座・小87座）
[旧　郡　名　]（old region name）
(神様の鎮座数）賀茂郡　46座（大4座・小44座）
[名神大 大 小]　式内小社

[旧　神社　名称 ] 奈疑知命神社
[ふ　り　が　な ]（なきちのみことの　かみのやしろ）
[Old Shrine name]（Nakichi no mikoto no kamino yashiro）

https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F1000000000000004146&ID=M2014101719562090086&TYPE=&NO=画像利用
【原文参照】国立公文書館デジタルアーカイブス　　延喜式 刊本（跋刊）[旧蔵者]紅葉山文庫

【オタッキーポイント】（Points selected by Japanese Otaku）

あなたが　この神社に興味が湧くような予備知識をオタク視点でご紹介します

神社にお詣り(For your reference when visiting this shrine)

この神社にご参拝した時の様子をご紹介します

伊豆急行　河津駅から　R135号を南下します

縄地のバス停辺りでR135号の下を通過する道へと枝分かれするので　縄地の集落を抜けて海辺に出る細い道を真っ直ぐに700～800m程下り海岸へ向かいます　縄地（なわじ）川の河口辺りに出ると鎮座しています
子安神社（Koyasu Shrine）に参着

縄地（なわじ）川の橋を渡ると　海浜に通じる道と　神社へと道は２又に分かれています　正面の神社へと向かいます　神社は北西を向いて　海に背を向け裏手の山が海風を遮っていますが　北側には　縄地（なわじ）川が流れていて　大きな波〈大潮や台風・津波〉等があれば　波をかぶるような場所にあります　そもそも海辺にありながら　海に背を向けて　山を向いて建てられていることが　珍しい

7段程の階段の上に木製の鳥居が建っていて　その横には社号標が立ち「延喜式　奈疑知命神社」と刻まれています　一礼をして　鳥居をくぐります

砂利が敷き詰められた境内の中央をコンクリートの参道が伸びていて　正面には拝殿が建てられています

拝殿にすすみます　

賽銭をおさめ　お祈りをします　
ご神威に添い給うよう願いながら礼　鎮まる御祭神に届かんと　かん高い柏手を打ち　両手を合わせ祈ります

拝殿に「乳の神様は裏にお祀りしています」と張り紙があります
子安の神は　祠に牛乳をかけると　乳の出がよくなるとされていて　間違って拝殿にかける人がいるのかもしれません

裏へ進むと　本殿の覆い屋が建ち　その奥の岩山の崖下に石の祠が祀られています　お詣りをします

すぐ横の浜には　一旦境内を出ないと下りられません
参道を戻ります

東に向かっている海浜は　どうでしょうか　その幅は100mも無い様な感じです

南北双方が崖で切立っています
北面は

南面の崖上には　国道135号が通っていますが　こちらへ下る道はありません

この浜は　縄地（なわじ）川が　流れ込んで　その浸食で形成した浜のようで　沢のような水量が相模湾へと注いでいます

この縄地（なわじ）川は　縄地沢とも称したらしく　式内社とされる奈疑知命神社は　かつて縄地沢の上流の「なぎの森」に鎮座していたと伝わり　ナギチとは　山崩れの所　崖　切替畑　焼畑の土地の意で　このナギチの転か　または字義通りの縄状に細長い土地の意とされています

河口付近から上流を見ると　何やら神体山のような山が見えます

現在の社地は　海抜で3m程度なので　大きな波〈大潮や台風・津波〉等があれば　波をかぶるような場所にあります
式内社のような歴史の長い神社は　あまり鎮座しない場所ですが　何かの事情で遷座したのだろうとも思われます

社頭まで戻り　一礼をします

神社の伝承(A shrine where the legend is inherited)

この神社にかかわる故事や記載されている文献などをご紹介します

『豆州志稿(zushu shiko)』〈江戸時代 寛政12年（1800）編集〉に記される伝承

延宝7年（1679）の上梁文が残っていて　光孝天皇の皇后の諱号（いみなごう）班子女皇の宗廟と　子安大明神は同じと書かれていると　記しています

【意訳】

子安明神　縄地村

延宝7年（1679）の上梁文云　惟以っては　子安大明神　興謂う者　仁王58代の御門
光孝天皇の皇后の諱号（いみなごう）班子女皇　興父の二品式部卿仲野親皇の御女　仁而　宇多天皇の御母夫人なり　彼の夫人　後　美濃別之宗廟　現　子安大明神と金鼓に錯柏木群　河津荘と　按に柏は楠の字　群は郡の字なり
末社に乳神伝あり　伊豆納符
〇山の神

【原文参照】国立公文書館デジタルアーカイブス『豆州志稿』選者:秋山章／校訂者:秋山善政[数量]15冊[書誌事項]写本 弘化04年[旧蔵者]内務省
https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F1000000000000002883&ID=M2018051109165431627&TYPE=&NO=

式内社「 奈疑知命神社（なきちのみことの　かみのやしろ）」の伝承について

『神名帳考証土代（Jimmyocho kosho dodai）』〈文化10年（1813年）成稿〉に記される伝承

奈疑知（ナキチ）命神社と記しています

【意訳】

奈疑知（ナキチ）命神社

知一本作智　神代期　投帯是謂長道盤神

【原文参照】国立公文書館デジタルアーカイブ『神名帳考証土代』（文化10年（1813年）成稿）選者:伴信友／補訂者:黒川春村 写本 [旧蔵者]元老院
https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F1000000000000039328&ID=M2018051416303534854&TYPE=&NO=画像利用

『神社覈録（Jinja Kakuroku）』〈明治3年（1870年）〉に記される伝承

所在については　不明と記しています

【意訳】

奈疑知命神社

奈疑知は　仮字なり
〇祭神　明らかなり
〇在所　詳らかならず

【原文参照】国立公文書館デジタルコレクション『神社覈録』著者 鈴鹿連胤 撰[他] 出版年月日 1902 出版者 皇典研究所
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991015『神社覈録』

『特選神名牒（Tokusen Shimmyo cho）』〈明治9年（1876）完成〉に記される内容

【意訳】

奈疑知命（ナキチノミコトノ）神社

祭神　奈疑知命
今按〈今考えるに〉
伊豆神階帳に　従4位上　なつひめ明神あり　奈疑知の疑の省かり　知の津と伝したる称と聞こゆ　村名の奈波知も奈疑知の伝訛なること　互いに証すべし　又　ナツヒメ明神の奈疑知命より外に当るべき神なきと　子安明神と云いて安産を祈るにても　この神の姫神にますことを知るべきなり　而るに　この神を夜須命に当てたるは　この社の旧祠にして　所由ある神と思われると子安講に因たると聞こえれど　彼神は佐伎多麻比咩命の御子にして　島内鎮座の神なるは更なり　八王子とも称して男神なるに　この神の姫神なるに合わざるを以って非説なるを知るべし
祭日
社格　村社（明細帳に子安神社とあり　祭神　奈疑知命）
所在　（賀茂郡下河津村　大字　縄地）縄地村

【原文参照】国立公文書館デジタルコレクション『特選神名牒』大正14年（1925）出版 磯部甲陽堂
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971155『特選神名牒』

『伊豆国式社攷略（ Izunokuni shikisha koryaku）』〈明治15年（1882）発行〉に記される伝承

式内社「奈疑知（なきち）命神社」は　子安明神と記しています

【意訳】

奈疑知（なきち）命神社

賀茂郡　縄地（なわぢ）村鎮座　なつひめの明神
旧称　子安明神社なる可し　式攷攷証注進特選

いま云う　当社 子安の称ある何の故なるを知らねど　いえども方俗比る因て　恩恵を祈るは　神験著明なりと鳴呼神祇の情状人智を以って測る可らに

【原文参照】国立公文書館デジタルコレクション『伊豆国式社攷略』萩原正平 著 出版年月日 明15.6  編 出版者 栄樹堂
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/815090『伊豆国式社攷略』

子安神社（Koyasu Shrine）に「拝 (hai)」(90度のお辞儀)

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